日立金属は28日、製品検査不正の再発防止で、2024年頃までに100億円を投じて検査データの適切な生成・管理を自動で行うシステムを各製造拠点に導入すると発表した。昨年4月に同社が発表した検査不正では、データの書き換えや、検査せずに過去の実績値を基にした数値の記載などが発覚。これを受け、人為的な検査データの書き換えを防止するITシステムを構築する。各拠点での体制整備や運用開始までは、整合性監査の頻度やサンプル数を増やすことで監視を強化する。

 同日、検査不正問題の調査報告と再発防止策、役員の処分を発表した。調査では、古い事例で1980年代からの磁石や特殊鋼、自動車鋳物製品などでの不正行為を確認した。製造や検査の条件を顧客に事前申請なしに変更した事案もあった。受注獲得や納期順守のプレッシャーで、工程能力や生産能力に見合わない条件で受注を行ったことが主な発生原因とした。また、不正公表による社会への影響などを危惧し、不正行為が継続的に行われてきたと認めた。

 再発防止策として、検査へのITシステムの導入のほか、4月から各子会社の品質保証部門長を同社の品質保証本部に兼務出向する体制とすることでガバナンスを強化する。また、検査不正などが発覚した場合に、20年6月に新設した最高品質責任者や品質保証本部長が製品の出荷を中止する権限と責任を持つことを社内で明確化した。

 今回の不正行為の発覚で、不正行為を認識するなどしていた当時の社長以下5人の役員が20年5月に退任した。現在の役員について、西山光秋会長兼社長以下10人が月額報酬の20~50%を1月から3カ間の減額を決めた。