日産自動車は27日、2030年代前半から主要市場に投入する全ての車両を電動車にすると発表した。商品投入を加速するとともに、バッテリーのエコシステム(産業の生態系)や生産効率の改善などにも取り組むことで50年までにカーボンニュートラルを実現する目標を定めた。日産の発表で、軽自動車大手2社を除く、乗用車メーカー6社の中長期電動車戦略が出そろったことになる。

 日産はこれまで23年度までに電動車の世界販売を100万台以上に引き上げる計画を掲げていたが、50年に向けた長期目標とその中間に当たる30年を見据えた電動車戦略を新たに打ち出した。

 具体的には、30年代前半以降に同社の世界販売の8割を占める日本、中国、米国、欧州に投入する全ての新型車を電動車に切り替える。30年代前半以前に投入した純ガソリン車の販売は継続する可能性もあるものの、電気自動車(EV)とeパワーを軸に電動車の投入を急ぐ。

 30年代前半までにはまだ時間があるものの、日本で20年にeパワー専用モデルとして発売した「ノート」や「キックス」のように電動車へのシフトは前倒しで進める。日産幹部は「できることは今すぐ全てやらなければ(パリ協定で目指す)2度もしくは1・5度以内に気温上昇幅を抑えられない」と、eパワーの投入を積極化する考えを示す。

 カーボンニュートラルを実現するため、全固体電池を含むバッテリーの性能向上やeパワーの活用に向けた合成燃料の検討も進める。ライフサイクルで排出する二酸化炭素(CO2)を実質ゼロにするため、生産技術の高度化やバッテリーのリサイクルに向けた取り組みも急ぐ考えだ。

 日産、ダイハツ工業、スズキを除く乗用車メーカー5社は30年時点における電動車の販売構成比を掲げているが、カーボンニュートラルに向けた世界の動向を踏まえ、計画の見直しを検討する動きもある。30年に50%の電動車比率を掲げる三菱自動車の加藤隆雄代表執行役CEOは「もう少しEVを増やすなど戦略の微調整が必要だ」とし、ホンダの幹部も「今のペースでは50年のカーボンニュートラルに間に合わない」と電動車投入の加速を示唆する。