日立パワーデバイス(奈良孝社長、東京都千代田区)は26日、電気自動車(EV)などでの採用を見込む新しいSiC(炭化ケイ素)パワーデバイス「TED-MOS(テドモス)」を投入すると発表した。チップ表面のトレンチ(溝)にひれを形成する独自構造を採用したことで、耐久性と低消費電力特性を「業界最高レベルに向上させた」(同社)。電動化を追い風にテドモスの引き合いが増えると見ており、SiC全体の売り上げを足元の約10億円から今後10年間で300億円規模に引き上げる。

 同社の既存の半導体は構造上、省エネのための抵抗効果と高耐久性の両立が難しかった。テドモスは、電流が集中するデバイス中央部に電圧のかかり方を緩和する「電界緩和層」を設けて電界強度を大幅に低減した。電流経路を最適化したことで、従来品比で短絡耐量を2割向上させた。

 サンプル出荷を3月から開始し、来年から量産を始める。