FOMM ONE(フォムワン)
ホイールは水をかくために特殊な構造となっている
ハンドル裏にはパドルを搭載

 超小型電気自動車(EV)の企画・開発を手がけるFOMM(フォム、鶴巻日出夫CEO、川崎市幸区)は、12月中をめどに、2013年からタイで販売している「FOMM ONE(フォムワン)」の国内販売を開始する。緊急時には水に浮く構造のフォムワンは、水害が頻発する日本での需要も見込まれる。導入に向け日本の車両の法規制への対応やバッテリー交換ステーションの設置場所の検討を進めている。

 フォムワンは、全長2585㍉㍍、全幅が1295㍉㍍、全高が1550㍉㍍と世界最小クラスの4人乗り車両で、「フロートドライブ」という特殊構造により、緊急時には水に浮く構造となっている。

 前輪駆動でタイヤにはインホイールモーターを搭載し、スペースの効率化や電費向上に貢献する。ホイールの形は、緊急時に水に浮いた際に緩やかな速度で前に進める設計となっている。

 車両の下部にはリチウムイオン電池を4つ搭載している。「スワッピングバッテリーシステム」を採用していることで、通常の充電に加えて、街中に設置する専用ステーションでバッテリー交換できる。このほか「ステアリングアクセラレーターシステム」により、加速や減速をハンドル裏のパドルシフトで操作することで、踏み間違い事故防止につなげる。国内で発売予定のフォムワンの基本的な構造は、タイで発売しているものと同じだが、現在、日本国内で発売するために法規に合わせた部品の取り付けを進めている。

 同社は、今回の日本での発売に伴い、車両やバッテリー、利用者などの情報をクラウドで統合管理するサービス「バッテリークラウド」を提供する予定だ。バッテリークラウドは、専用のアプリケーションを用い、航続可能距離やバッテリーの状態を確認することができる。ドライバーは走行中の充電状況でどこまで走行できるかが分かるため、次の交換場所までの情報と地図情報を連携して、ルートを設定することができる。

 同社担当者によると、「バッテリー交換ステーションは、商業施設などの人が集まる場所に設置予定だ」という。バッテリー交換ステーションには専属のスタッフを配置し、1個約30㌔㌘のバッテリーを約5、10分程度で交換できるようにすることで、顧客の利便性向上を図る。

 FOMMは、モビリティの企画開発を行うR&D(研究・開発)型のモビリティメーカーとして、13年に設立した。主に近距離(ファーストワンマイル)の移動に最適なモビリティと周辺のインフラ・システムの開発を続け、19年3月にタイでフォムワンの量産を開始した。鶴巻CEOは鈴木自動車工業(現・スズキ)で二輪車のエンジンから車体まで、多岐にわたる設計を担当していた経験を持つ。

 フォムワンのほか、軽キャブバンタイプの小型EVを佐川急便などと共同で開発している。

 タイの生産拠点は、小型EVの量産に適した小規模生産工場「マイクロファブ」として稼働している。車両を小規模生産に適した形に設計することで、部品の製作を外部に委託し、プレスや溶接、塗装工程を削減している。基幹部品は全て共通化、現地調達しているため、各国に展開する際にも効率的に生産を開始することが可能となる。

 同社は、マイクロファブを小規模生産技術としてパッケージ化することで、現地生産を簡素化し、将来的に世界展開も視野に入れて開発に取り組んでいる。(保知 明美)