ホンダ系部品メーカーが試練の時を迎えている。四輪事業の収益力の悪化に苦しむホンダは工場閉鎖といった固定費削減で業績改善を図る一方で、電動化などに対応するため、巨額な研究開発投資の継続を求められている。系列部品メーカーも同様で、研究開発をはじめとする投資は拡大傾向にあり「稼ぐ力」が弱まっている。ホンダが過去に掲げた四輪車世界販売600万台体制に追随してきたツケも部品各社の業績に重くのしかかる。「このまま(ホンダに)依存しているとリスクは増すばかり」(中堅系列部品メーカートップ)と危機感は強い。生き残りに向けて岐路に立つホンダ系列部品メーカーの奮闘を4回の連載でまとめる。

 「(ホンダ向けの)生産の落ち込みが目立つ。新工場を立ち上げたが、近年は、ホンダの当初計画より生産台数が少ない状況が続いており、採算が合わなかった」。生産効率を上げるためにアジア圏の複数拠点を統合した系列部品メーカー幹部は苦い表情だ。系列部品メーカーはここ数年、ホンダの拡大路線による調達戦略の変更への対応に苦慮してきた。

 ホンダは2012年、伊東孝紳前社長のもと、16年に四輪販売を当時の2倍弱の600万台に引き上げる計画を発表した。この達成に向けて世界6極(日本、中国、アジアオセアニア、欧州、北米、南米)で四輪車の開発・生産体制を構築する計画も進めた。海外のメガサプライヤーからの調達割合を4割にまで引き上げる方針を掲げた際は、系列部品メーカーに動揺が広がった。

 しかし、販売台数は計画通りには伸びず、その後に社長に就いた八郷隆弘氏は世界6極体制などの拡大戦略を撤回。生産能力を削減するため、狭山、英国、トルコ工場の閉鎖を決定した。ホンダ向けを当て込んで英国に進出していたケーヒン、テイ・エス テック、ユタカ技研も英国工場の閉鎖を決定するなど、系列部品メーカーも方針の転換を余儀なくされた。

 メーカーの拡大戦略見直しの余波が、じわりと系列部品メーカーの業績に響いてきている。ホンダと取引が多い部品メーカー13社の20年3月期の業績は全社が減収、13社合計の売上高は前年同期と比べて1割弱落ち込み、営業利益は4割の減少となった。

 中でも深刻なのは、「稼ぐ力」の低下だ。稼ぐ力を示すROA(総資産利益率)は、ホンダの拡大戦略が本格化した13年度と比べると、エフ・シー・シーが9・5%から19年度には2・4%に、テイ・エス テックも9・0%から4・4%まで落ち込んだ。

 ROAの低下を招いている大きな原因は、高水準の研究開発費にある。CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)領域での競争が焦点となっているが、競合相手のメガサプライヤーやトヨタ系部品メーカーと比べて、決して規模が大きくないホンダ系列にとっては、投資できる金額に限界がある。それでも、ここ数年で各社の研究開発費は増加の一途をたどっており、13年度と比べると19年度はケーヒンが約80億円増の261億円、武蔵精密工業が28億円増の43億円、ショーワが38億円増の118億円にそれぞれ引き上げた。各社の営業利益率はほぼ横ばいで推移するなど足元の状況は厳しいが、「新しい仕事(受注)を取るには、研究開発費はどうしても削れない」(機能部品を手掛ける系列部品メーカートップ)という危機感があるためだ。高水準の先行投資を継続しながら、利益率をどう改善するのかが経営課題となっている。

 〝ホンダ頼み〟が難しくなっている中、再編を通じて生き残りの道を探る動きも出てきた。ケーヒン、ショーワ、日信工業の3社は日立オートモティブシステムズと経営統合することで合意した。統合会社のホンダの出資比率は33・4%で、独立系の日立グループが主導権をにぎる。ホンダで購買を担当する貝原典也常務執行役員は「将来、広く拡販していくことを見据えた出資割合にした」と、ホンダ色を薄めることで新規受注を開拓する。4社が保有する経営資源をホンダ以外にも有効活用し、メガサプライヤーとして「稼ぐ力」を強化することを目指す。

 ただ「ホンダ系列」である以上、各社の主力はやはりホンダ向けだ。系列部品メーカーの中にはホンダ向けの売り上げが8~9割を占める企業もあり、現状での関係性は一蓮托生に近い。欧州メーカー向けを強化している大手系列部品メーカートップも「芽が出るまでは数年から数十年かかる。やはりホンダ向けが底堅い」と話す。

 主力のホンダが生産体制を見直す中、いかに現状の収益基盤を守り切るか。他メーカーの新規受注獲得による事業規模の維持・拡大の一方で、ホンダ向けのリソースをどこに、どれだけ振り分けるのかのバランス感覚が必要になる。ここの采配が、系列部品メーカーの生き残りを左右することになる。