近年、全体の交通事故発生件数が減少している一方で、高齢運転者が第一当事者となる事故の割合は増加しており、社会問題となっています。

 警視庁が発表した「高齢運転者(第一当事者)の交通事故発生状況」によると、65歳以上の人が第一当事者となった事故の割合は2010年には12.7%でした。以降、その割合は増加し続けており、19年には18.1%となっています。19年に発生した事故のうち、違反別に割合をみると「安全不確認」が39.1%、「交差点安全進行」が17.4%と、この2つが違反の過半数を占めています。加齢に伴う動体視力の衰えや反応時間の遅れなど身体機能の変化により、注意力や瞬間的な判断力が低下していることが主な原因とみられています。

 そこで現在、各自動車メーカーが緊急自動ブレーキやペダルの踏み間違いによる誤発進防止機能などの安全運転を支援するシステムを搭載した車両「セーフティ・サポートカー(サポカー)」の普及促進へ向けて取り組んでいます。同時に、新車への搭載だけではなく、すでに販売されている車に向けた後付けの安全装置についても開発・販売を進めているところです。

 国としてもサポカーや後付け安全装置の普及に向けて、20年に満65歳以上となる人を対象とした購入支援制度として「サポカー補助金」を実施しています。サポカー補助金では、①対歩行者衝突被害軽減ブレーキやペダル踏み間違い急発進抑制装置を搭載する車(サポカー)の購入②後付けのペダル踏み間違い急発進抑制装置の購入―を支援しています。

 このほか、運転免許証を自主返納するといった人々のために、MaaS(サービスとしてのモビリティ)の実証実験も加速しています。特に、移動手段がマイカーしかない地方部の高齢者にとっては、運転に不安を抱いていても生活のために運転をせざるを得ないという問題があります。そこで、各自治体や企業、大学が連携し、ライドシェアサービスをはじめとした新たなモビリティサービスの構築などを目指した、さまざまな取り組みが行われています。