レンタカー業界はコロナで大きなダメージを受けた(写真はイメージ)

 新型コロナウイルスの感染拡大で利用の大幅な落ち込みに見舞われたレンタカー業界が、観光需要の取り込みに向けた準備に乗り出している。8月にも始まる国の観光振興策「GoTo(ゴートゥー)トラベル事業」によって国内旅行の活性化が期待される中、レンタカーは、「3密」を防げる移動手段として期待が高まっている。ただ、現在調整中の事業案では、レンタカー利用で補助を受ける場合のスキームが明確に示されていないなど課題も少なくない。レンタカー各社は、旅行代理店などと連携した需要喚起策を強化するなど対応を急いでいる。

 同事業は、コロナ禍で大打撃を受けた観光産業を活性化する目的で国の2020年度補正予算によって実施されるもの。宿泊が伴う場合1泊2万円、日帰りで1万円を上限に旅行代金の半額相当を補助する計画だ。すでに示されている事業計画の概要案をみると、補助額の3割を旅行先で使える商品券として支給し、7割部分を旅行代金から割引する制度設計だ。

 こうした商機を前に、コロナ禍によるダメージが甚大だったレンタカー各社も利用客の増加に期待を示している。関係者によるとレンタカーの貸し渡し件数は、外出自粛や政府による緊急事態宣言によって大きく落ち込み、4~5月は前年同月比6~7割減となる地域が少なくなかったという。さらに観光需要に支えられてきたエリアでは9割減となるケースもあるなど、経営環境は厳しさが続いている。

 同事業は当初の想定と比べて開始時期がずれ込んでいるものの、8月の早い段階での立ち上げに向けて準備が進んでいる。夏休み需要に間に合えば、疲弊した観光地のレンタカー利用にも拍車がかかりそうだ。北海道にあるレンタカー会社の経営者は「需要が拡大した時に自社のレンタカーを選んでもらえるよう、今から準備する」とし、レンタカーを活用した旅行の拡販を旅行代理店などにも働きかけはじめた。

 ただ、レンタカーを利用した場合の補助については、はっきりしない部分が少なくない。現時点で示されている概要では、旅行代理店や旅行予約サイトなどを通じて宿泊や観光体験などとセットで利用した場合に、交通機関の利用料も含めた総額をベースに補助を受けられる。個人で手配する交通は割引の対象外とされており、レンタカー各社が店舗や自社予約サイトで直接受け付けた場合の扱いについては扱いが不透明な状況だ。

 観光庁では「レンタカーの単独利用も含め、より幅広く観光を補助できるよう、今後詳細を検討していく」(観光振興室)としており、予約サイトによるレンタカーの単独予約や旅行事業者を通さない利用についても、補助対象となる可能性は残されている。より具体的な補助スキームなどは、16日に公募が始まった事務委託先が決定した後に固まる見通しで、今後の動向に注目が集まっている。