東芝は3日、自動車などで自車の動きと他車の将来の動きを予測する世界最高精度の人工知能(AI)を開発したと発表した。公開データを使った実験では、従来手法に比べて誤差をそれぞれ40%削減した。自動運転支援システム(ADAS)や自動運転の安全走行に必要な動きの予測精度を高めるAI技術として、2023年度の実用化を目指す。

 自車の動きを推定する「自車両の動き推定AI」と、さまざまな交通環境で周辺車両の将来の動きを予測する「他車両の動き予測AI」を開発した。AIが分析するデータは、一般的な車載カメラに加え、加速度センサーや角速度センサーなど慣性センサーを使い、安価かつ衛星測位システムのように周辺環境に左右されないセンサーで取得できるものを使用する。

 自車の動きを推定するAIは、カメラ画像から周囲環境の3次元空間地図の生成と車両位置の推定を同時に行う「SLAM」という技術をベースに開発した。車両速度が一定でセンサーの値に変化が少ない場合でも、車両の動きに応じてセンサーごとにデータの有用性を判定し、有効なセンサーを組み合わせて動きを推定できるようにしている。

 また、他車の将来の動きを予測するAIは、公開データを用いた実験で、4秒先の位置予測で従来手法と比べて誤差を40%削減した。開発したAIは、道路形状を一般化した幾何学的な特徴を学習させ、実際の道路形状に依存しないため、一般道でも膨大な数の予測AIモデルの作成を不要にした。車線ごとの動きの予測と走行する可能性が高い車線を予測する2段階構成で、さまざまな道路形状で高精度な予測ができるようにしている。