トヨタ自動車は16日、ブロックチェーン(分散型台帳)技術の活用に向けて幅広くパートナー企業を募ると発表した。MaaS(サービスとしてのモビリティ)サービスに向く少額決済のほか、サプライチェーン(供給網)の効率化や中古車売買など自動車業界でも幅広く活用が見込めると判断、社会実装に向けて取り組みを加速させる。

 トヨタは、トヨタファイナンシャルサービスやデンソー、豊田中央研究所らグループ5社と昨年4月に仮想組織「トヨタ・ブロックチェーン・ラボ」を設立し、ブロックチェーンの可能性を本格的に探り始めた。これまでに①ID共通化による契約作業の簡素化やポイントサービスへの活用②車両データ活用によるサービス高度化③サプライチェーン効率化、トレーサビリティ(追跡性)向上④車両資産や権利などのデジタル化を通じた資金調達―などのテーマが浮上し、①②は昨年中に実証実験して有用性を確かめた。

 例えば、②では車両の走行状況やトヨタ販売店以外での点検履歴などをブロックチェーン上で共有し、下取り額に反映する試みだ。

 また、③では品質管理や輸出入時の原産地証明が効率化できるほか、重層的な取引に伴う企業間の手間やコストが飛躍的に減らせる可能性があるという。

 来年度からは、より実サービスに近い環境で実証を続けるとともに、新たな用途を探ったり、実装に向けて課題を洗い出すためグループ内外の企業にも参画を呼びかける。系列カードのポイントプログラム共通化などは来年度中にも実現する見通し。

 ブロックチェーン技術は、取引記録をインターネット上で共有し、複数のサーバーが互いに監視しながら保存するデータ管理の仕組み。もともとは仮想通貨の信頼性を担保する技術として開発されたが、改ざんリスクが極めて低く、さまざまなデータの共有に使えると注目されている。

 トヨタファイナンシャルサービスの担当者によると、利用者が情報の開示先や範囲を決められる点でも社会に受け入れられやすいという。