東風ホンダ

新型コロナウイルスの感染源となっている中国・湖北省政府が、企業の事業再開を3月11日以降としたことで、ホンダと日産自動車の省内にある合弁工場の生産再開がさらにずれ込むことになった。自動車各社は新型コロナウイルスの感染拡大問題が収束しておらず、影響を見極められないことから今期の業績見通しに織り込んでいない。特に湖北省に完成車生産拠点を持つホンダ、日産ともに中国が主力市場の一つになっているだけに、約1カ月半にわたる生産停止が今後の業績に大きなマイナスのインパクトを与える見通し。

日産は、湖北省政府の措置に対応して2月24日以降に生産再開する予定だった襄陽工場と鄭州工場、鄭州日産の工場の稼働について、3月11日以降で再検討することになった。また、部品調達に支障があるため、国内の九州工場は2月24日と28日、子会社で完成車の生産を委託している日産車体の工場も2月28日に生産停止する。

広州市にある花都工場は2月17日、大連工場は2月21日にそれぞれ1直で操業を再開している。

日産はグローバル販売のうち、中国が3割を占める主力市場。中国事業は日産の3月期業績には1-12月期が反映される。このため、今回の生産停止に伴う中国での生産・販売のマイナスは、出足から2021年3月期連結業績の足を大きく引っ張ることになる。

ホンダと東風汽車の合弁会社東風ホンダでは、2月21日に従業員が出勤し、湖北省武漢市の工場の生産再開について2月24日の週を予定していたが、地方政府の措置を受けて3月11日に従業員が出勤し、3月11日の週以降、できるだけ早いタイミングでの生産再開を目指すことにした。

ホンダと広州汽車の合弁である広汽ホンダの広州市にある工場は2月17日に部分的に生産を再開しており、部品の供給状況などを確認しながら段階的に生産量を引き上げていく。輸出専用モデルの生産拠点である本田汽車(中国)は2月20日に一部で操業を再開した。中国・広東省にあるエンジンやトランスミッションの生産拠点も部分的に生産を再開している。

ホンダの2019年4-12月期の中国での四輪車販売台数は前年同期比7.8%増の122万台と順調に推移していた。しかし、新型コロナウイルスの影響による東風ホンダの生産停止が長期化しており、前年度実績を割り込む可能性もある。

湖北省以外の中国の自動車生産拠点は、ほぼ稼働しているものの、1直にして生産量を抑えている状態が続いている。トヨタは2月17日に長春工場と広州工場、2月18日に天津工場で、それぞれ昼勤のみの1直で生産を再開した。部品の供給体制を確認しながら段階的に生産ペースを引き上げていく方針だが、2直に戻す時期は「未定」としている。成都工場は2月24日に生産を再開する。

サプライヤーが集積する湖北省の地元政府が省内にある企業の事業再開を3月11日に延期したことから、中国国内に加え、中国製部品を採用している日本での自動車生産に影響が及ぶことを懸念する声もある。トヨタは少なくとも2月24日の週の日本の生産は「通常稼働」としている。

マツダはCX-8などを生産する南京の合弁工場が2月17日に1直で稼働したほか、南京工場で生産するモデル向けのエンジンを生産する工場も2月20日から稼働を再開した。CX-4などをライセンス生産している第一汽車グループの工場は生産ライン改修のため、現在も停止しているという。

三菱自動車は湖南省にある広州汽車との合弁工場の再開が2月27日になる見通し。部品調達や従業員の確保に支障があるため。福建省にある東南汽車との合弁工場は再開時期が「未定」だったが、2月24日に再開できる見通しとなった。

いすゞ自動車の重慶市にある合弁工場は、地方政府の許可が得られず再開が予定より遅れていたが、2月18日に許可が下りたことから、トラックの生産を再開した。サプライチェーンの問題から2月24日以降としていた江西省南昌市にある合弁工場は、サプライチェーンなどの確認を完了、2月20日に生産再開を前倒しした。

日野自動車は、上海市にあるエンジン工場の生産を2月17日に一部再開したが、大型トラックを生産する広州市の合弁工場の稼働は2月24日以降になる見通し。