稼働していたころの東風日産の花都工場(参考画像)

新型コロナウイルスの感染拡大で、春節後も休暇を延長してきた中国の企業が2月10日、一部で事業活動を再開し始めた。日系自動車メーカーの中国合弁会社も一部で事業を再開している模様だが、サプライチェーンの確認に時間がかかっており、ほとんどの生産工場が止まったままだ。自動車部品工場が集積している武漢市が新型コロナウイルスの発生源で、現在も事業活動を停止していることも影響している。中国での自動車生産の停止が長引いて、市場にマイナスのインパクトを与えることを懸念する声も広がっている。

新型コロナウイルスの感染が拡大したことを受けて中国の各地方政府は、武漢市のある湖北省を除いて2月2、3日までだった春節の休みを2月9日まで延長して経済活動を自粛することを要請した。このため、日系自動車各社は中国の合弁工場も1月25日の春節の休暇から操業を停止しており、2月9日まで約半月操業を停止していた。

マツダの中国合弁の完成車工場は2月10日から操業を再開する予定だったが、10日と11日の生産停止を決めた。サプライチェーンの確認に時間がかかっている模様で、2月12日以降の生産再開を目指す。エンジン工場については2月10日に事業は再開したものの、製造ラインは停止している。

日産自動車は、広州の合弁工場について2月10日以降、操業を再開する予定としていたが、同日の自動車生産ラインは停止したままで、操業していない。調達している部品の生産拠点の稼働状況や在庫を確認して週内の生産再開を目指すとしている。「合弁会社の従業員の出勤状況については分かっていない」(日産・広報部)という。湖北省にある合弁工場については地方政府の要請に応じて生産再開は2月14日以降になる予定だ。中国製部品の調達で日本など、中国以外の生産拠点への影響はほとんどない見通し。
ホンダは2月10日に広州市にある合弁生産拠点の広州ホンダ、2月17日に武漢市にある東風ホンダの生産再開を目指していた。広州ホンダは2月10日、従業員の出勤状況の確認と、サプライチェーンの確認作業を実施、生産ラインはストップしたままだ。広州ホンダで製造するモデルは、武漢市にある東風ホンダと部品共通化を進めてきたことから、武漢市の工場で生産する部品も数多く採用している。このため、必要な部品の調達を確認するだけでも難航しており、広州ホンダが生産を再開するまで時間がかかる見通し。ホンダでは通常、部品の在庫は3日分で、本格的な操業再開にはすべての部品が調達できる目処が立ってからとなる。

また、東風ホンダは春節の休暇中に実施する予定だった生産ラインの改修作業を、新型コロナウイルスの感染拡大の影響から途中で停止している。このため、湖北省の経済活動が再開できる見通しの2月14日からラインの改修作業を再開、これと並行して部品の在庫や調達状況を確認して、2月17日の操業再開につなげたい意向だ。

2月10日に中国の合弁工場の生産再開を予定していたいすゞ自動車は、重慶市にある合弁工場については地元政府からの自粛要請を受けて生産停止を継続、再開は2月17日以降に延期する。江西省南昌にある合弁工場についても生産再開を2月17日に延期することにした。

トヨタ自動車は中国国内にあるすべての合弁工場の稼働について2月17日以降に延期することを決めており、再開時期は「部品調達や物流の状況を見て判断する」(白柳正義執行役員)としている。トヨタは日本など、中国以外で生産している機種に中国製部品を採用しているが「在庫や(不足する場合は)代替生産の可能性を精査する」(同)としている。中国以外、今週いっぱい通常通り操業できることは確認済みで、来週生産分のサプライチェーンを確認しているという。

中国企業が経済活動を再開しても、新型コロナウイルスの感染は依然として拡大しており、経済に打撃を与えることは避けられない見通し。ホンダの倉石誠司副社長は「中国の売上げは好調でバックオーダーも抱えていたが、問題が長期化することで消費者に心理的な影響が及ぶ可能性はある」と、中国新車市場の先行きを懸念する。

日系企業の2019年4-12月期業績の公表シーズンだが、各社とも「算定できない」ことを理由に新型コロナウイルスによる業績への影響を織り込んでいない。ただ、問題が長期化すると、中国が主力市場の一つになっている日系自動車各社の業績にも深刻な影響が及ぶ可能性がある。