UDトラックスの自動運転実験車両

事業用車両で自動運転の実用化に向けた取り組みが本格化している。UDトラックスは、北海道の工場敷地内のクローズの環境下でドライバーが運転操作に関与しない自動運転レベル4(限定地域での自動運転)の実証実験を8月に実施する。ロボットベンチャーのZMPは、MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)の一種として日の丸交通、日本交通とともに、自動運転タクシーと空港リムジンバスを組み合わせた移動サービスの実証実験を実施する。実用化の面でも三菱ふそうトラック・バスが今秋に市場投入する予定の大型トラックで自動運転レベル2(部分自動運転)の機能を搭載する方針。ドライバー不足という危機感を背景に、自動運転は事業用自動車で先行しそうだ。

トラックやタクシーといった事業用自動車で、自動運転の開発が加速しているのはドライバー不足やドライバーの高齢化が背景にある。インターネット通販市場の拡大に伴って宅配需要が伸びている一方で、トラックドライバー不足の問題は深刻化しており、2027年には求人に対して24万人、全体の25%が不足するとの予測もある。タクシーでもドライバー不足によって都内の法人タクシーの2018年の稼働率は76.1%にまで低下、乗務員の半数が60歳以上と高齢化が進む。今後、団塊の世代のドライバーが大量リタイアすると、トラックもタクシーも稼働率は「危機的状況に陥る」可能性がある。

こうした状況下、自動運転がドライバー不足という課題を解決する技術として注目されており、開発が本格化している。UDトラックスは日本通運、ホクレン農業協同組合連合会とともに、北海道で自動運転トラックの実証実験を8月の1カ月間実施。ホクレンが保有する精糖工場の施設内で、てん菜を集荷して加工する施設までの約2kmのルートをレベル4で自律走行する。実証試験は8月のオフシーズンに、閉鎖空間ながらUターンや右・左折、てん菜を受入投入口にバックで着けることを含めて実際に輸送している一連の動きを自動運転で1日中繰り返す。運転席にUDトラックスのドライバーが座るが、基本的に操作しない。

てん菜の集荷シーズンは約250台のトラックを使って加工場まで輸送しており、自動運転レベル4で輸送できれば生産性向上が図れる。UDトラックスは、2020年度に自動運転レベル4のトラックを事業者に貸し出し、港湾など、限定地域で実証して技術を評価するなど、閉鎖空間での実証を繰り返し、2030年の完全自動運転の商用化につなげていく構え。