ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長は18日、東京・港区で開いた法人向けイベント「ソフトバンクワールド2019」の基調講演で「日本は技術の最先端の国だったのにほんのこの何年間で一番大切なAI(人工知能)の分野で発展途上国になってしまった。手遅れではないが、かなりヤバイ」と述べ、日本の将来に危機感を示した。

孫社長は、東南アジアやインド、中国の若手企業家が交通やホテル、決済などの分野で、AIを活用して世界ナンバー1クラスの企業になっている例を挙げて日本がAIで出遅れていることに危機感を示した。「AIをかじった人が『AIに何ができる。別の教育の方が重要』という人もいるが時代錯誤もはなはだしい。政府やビジネスマン目を覚ましてキャッチアップしないといけない」と述べた。

また、同社グループが運営する10兆円のソフトバンクビジョンファンドは各分野でAIを活用しているユニコーン企業に特化して出資している。孫社長は、日本企業に出資していないことについて「悲しいかなAIのユニコーンがほとんどなくて、投資したくてもチャンスがない」のが理由と述べた。ただ「今はまだAI革命がはじまったばかり」と、AIへの取り組みを促した。

AIが人間の職業を奪うとの見方については、仕事を進化させるものであって「AI革命は人間が幸せになる」のが目的との見解を示した。

さらに、孫社長は「AIが何にでも使えるとの考えは間違っている」と述べ、AIの得意分野である「将来の予想」に活用するべきとの考えを示した。ソフトバンクが出資する中国で中古車ビジネスを手がける瓜子は、売れ筋の中古車をAIが予測、中古車の在庫回転率を業界平均の60日から16日に短縮したことなどを紹介し「AIの推論で、より儲かる、よりスピーディな経営が可能になる」と述べた。