ヤマハブランドの電動スクーター「EC-05」

ヤマハ発動機は6月27日、バッテリー交換式電動スクーターを手がける台湾のスタートアップ企業Gogoro(ゴゴロ)との協業によるヤマハブランドの電動スクーター「EC-05」を8月1日に台湾市場に投入すると発表した。ヤマハは電動二輪車市場が急激に拡大している台湾で高いシェアを持つスタートアップ企業と組んで電動二輪車市場を開拓する。

ヤマハとゴゴロは2018年9月にEV(電動車)ビジネスでの協業で検討することで合意した。電動スクーターのEC-05は協業の第1弾となるOEM(相手先ブランドによる生産)供給車。ゴゴロの電動スクーター「S2」をベースに、ヤマハがデザインを担当した。ゴゴロの本社工場で製造し、ヤマハモーター台湾が販売する。

最高速度は90km/hで、40km/h平地走行での航続距離は約110km。走行して電池の残量がなくなってくると、ゴゴロが台湾国内で約1200カ所展開しているバッテリー交換ステーション「GoStation」でフル充電しているバッテリーに交換して走行できる。

価格は9万9800台湾ドル(約35万円)で、初年度2万台の販売を目指す。

ゴゴロはバッテリー交換式スクーターの製造・販売や、電動スクーターのシェアリングサービスを手がけるスタートアップ。台湾の電動二輪車市場は2016年が2万1000台だったのが2017年に4万4000台、2018年に8万2000台と、二輪車市場全体の1割を占めるまで拡大してきた。電動二輪車でゴゴロのシェアは90%で、実質的に台湾の電動二輪車市場はゴゴロが牽引してきた。

ヤマハも台湾に電動スクーター「E-Vino」を販売しているが、2018年の販売台数は600台にとどまる。ゴゴロは2011年に設立されたスタートアップだが、交換式バッテリーのインフラを整えて利用者の利便性を向上する先駆的な取り組みによって市場を開拓するなど、電動二輪車分野では先行している。ヤマハは対抗するよりも協業する方が得策と判断した。

電動化や自動運転、コネクテッドなどによって自動車業界は大きな変革の波にさらされており、今後、ITなどの異業種の本格参入や、キーとなる技術をスタートアップが握るケースも想定される。大企業のヤマハが、スタートアップから電動スクーターをOEM調達するという、従来なら考えられなかった協業は、まさに自動車業界の「ゲームチェンジ」を象徴する動きだ。