日産 西川社長
スナール会長

日産自動車は6月25日、横浜市西区のパシフィコ横浜で、「第120回定時株主総会」を開いてガバナンスを強化するための指名委員会等設置会社への移行や、取締役11人の選任などについて決議、カルロス・ゴーン氏による経営体制からの完全脱却を目指す。ただ、一時は日産に43.4%出資するルノーのジャンドミニク・スナール会長が、日産のガバナンス改革の議案を「棄権」する意向を表明、その後、日産が妥協したものの、両社の関係はギクシャクしている。株主総会では、日産の取締役を兼務するルノーのスナール会長に対して、日産の株主から厳しい質問が浴びせられる可能性もある。

日産の株主総会では、ゴーン事件を受けてガバナンスを強化するため、指名委員会等設置会社へ移行するための定款変更を決議する予定だ。ルノーは日産が指名委員会等設置会社へ移行する議案を棄権する意向との書簡を日産に送付した。ルノーが棄権した場合、議案は否決されることから日産はガバナンス強化に逆行するとして強く反発。

これに対してスナール会長は、ルノーの定時株主総会で、指名委員会等設置会社への移行に伴って発足する指名・報酬・監査の各委員会の委員に、スナール会長1人しか入っておらず、ルノーのティエリー・ボロレCEO(最高経営責任者)が入っていないことが棄権の理由と説明。株主総会が迫っている中、日産はボロレCEOを監査委員会の委員に選出することを決定、ルノーはこれを歓迎するコメントを表明した。ただ、株主総会の正常な運営を「人質」にしたルノーのやり方に、日産の幹部は反発を強めている。

また、ルノーは、ルノーの筆頭株主であるフランス政府の意向もあって日産との経営統合する意向で、スナール会長は日産の西川廣人社長に経営統合の検討を申し出ている。日産側は独立性を重視して、これを拒否しており、両社ともに不信感が増している。

アライアンスのまとめ役だったゴーン氏が完全に退場し、ゴーン後のアライアンスの新しいあり方を巡って、主導権争いが本格化する見通しだ。

スナール会長は日産の取締役でもあり、日産の株主総会で株主がどんな反応を示すのか注目される。

さらに、日産の西川社長の責任を追及する声が上がる可能性もある。西川社長はゴーン事件への関与が取りざたされており、日産の業績が低迷している問題もある。

株主総会では、取締役11人の選任も諮る予定。候補者は西川社長、山内康裕COO(最高執行責任者)のほか、ルノーのボロレCEOも取締役候補となっている。