一方、ルノーは、フランス政府の要請もあって今後、日産に対して経営統合を再び求めてくる見通しだ。日産では現在は「経営統合を議論する時期ではない」として、経営の独立性を維持するため、拒否する方針だ。ただ、ルノーとFCAは、今年1月には経営統合の交渉を水面下で進めていた。アライアンスに影響する事案だが、ルノーは日産に情報を伏せたまま4月には日産に経営統合を申し入れており、日産内部ではルノーに対する不信感がにじむ。
ルノーも同様だ。FCAが経営統合を取り下げた最大の理由はフランス政府の介入と見られるが、日産がルノーとFCAの経営統合に積極的でないことも理由の一つと考えられる。日産は6月3日、西川廣人社長名で「FCAがアライアンスメンバーに加わることになれば、新たにその領域、間口が広がり、シナジーを拡大するオポチュニティ(機会)がある」としながらも、仮にルノーとFCAが経営統合した場合「ルノーの会社形態が大きく変わることになるため、これまでの日産とルノー両社における関係のあり方を基本的に見直していく必要がある」と言及した。
FCAはルノーと経営統合することで、自動車業界のトレンドである電動化や自動運転などで先行する日産の先進技術を手に入れることが目的と見られる。FCAとしてはルノーと経営統合しても、日産の先進技術を入手できなければ、意味がない。経営統合した場合の関係見直しを日産が示唆したことからFCAは手を引いたと思われても仕方がない。ルノー側は日産が経営統合を壊したと見る可能性もある。
ルノーとFCAの経営統合を巡る一連の動きが、日産とルノーの関係に微妙な影を落としている。