FCA(フィアットクライスラーオートモービルズ)は6月6日、ルノーに対して提案していた経営統合を撤回したと発表した。経営統合を前向きに検討していたルノーが6月5の取締役会で、大株主のフランス政府が経営統合の協議を延期するよう求めたことから、FCAと協議に入ることを決定しなかったことなどから、FCAはフランス政府の介入によって経営統合がスムーズに進まなくなると判断した。FCAと破談となったルノーは、日産に経営統合を求めてくる可能性が高い。ただ、FCAとルノーの一連の経営統合を巡る動きで、日産、ルノーとも互いに不信感が高まっており、今後の動向は見通せない状況だ。
ルノーはFCAとの経営統合について前向きに捉えており、正式に協議入りを決定すると見られていた。しかし、6月4日の取締役会では「引き続き検討する」として判断を先送りし、翌5日の取締役会では、フランス政府の代表が、協議入りの延期を求めたことから、FCAとの経営統合の協議入りを正式決定できないでいた。
フランス政府は、フランス国内の雇用を守ることを条件にルノーとFCAの経営統合を歓迎していた。しかし、統合新会社がオランダに本社を置き、長期保有の株主の議決権を2倍にするフロランジュ法の対象外となることから、フランス政府の影響力が薄まることを懸念、FCAにフランスに統合会社の拠点を置くことや、会長にはルノー出身者を置くことを求めていたとされる。
FCAは、ルノーとの経営統合によって売上高、台数、収益性、技術の観点から両社の株主、ステークホルダーにメリットをもたらし、卓越したグローバル自動車メーカーが誕生するとの考えは現在も確信しているが「フランスでの政治的条件によって、統合を実現できる状況にない」としており、事実上、フランス政府の介入を嫌って経営統合を断念。年間販売台数約870万台の世界第3位、日産自動車、三菱自動車を加えたグループの合計販売台数が1500万台以上の世界トップの自動車メーカーグループとなることは幻に終わった。
ルノーは1993年にボルボと合併することで合意したが、フランス政府が干渉してきたことから、ボルボの経営陣、従業員、株主らが強く反発したことから合併が白紙に戻った。フランス政府が原因で、破談するのは今回が2回目だ。