ロータリーとCO2回収装置を組み合わせたマツダ「ビジョンX-クーペ」
リアデザインが個性的なマツダ「ビジョンX-コンパクト」
スバル「GLファミリー」(レオーネ)をベースに高性能モデルに改造。米国らしいアプローチ
タイではハイラックスとベストセラーの座を争ういすゞ「D-MAX」
BYDが日本市場専用に開発した「ラッコ」
中国発EVスーパーカーのヤンワン「U9」。市販車最高速度記録を塗り替えたという
「モノグラム」の名の通り、ブランドロゴがいたるところに配置された「メルセデス・マイバッハSL」
BMW「M2 CS」のリアにそびえ立つダックテール

前回から名称を一新した「ジャパンモビリティショー(JMS)」が東京ビッグサイトで開幕した。会場では自動車メーカー各社の最新モデルの展示をはじめ、未来のモビリティ体験、スタートアップによる新技術の提案、さらに歴史やカルチャーにフォーカスした企画など、見どころは尽きない。

注目を集める今年のJMSを、日刊自動車新聞電子版の編集メンバーが独自の視点で気になるポイントを紹介する。

「いくっしょ、モビショー!」。会期は11月9日まで。

 

「東京モーターショー」から名称変更して2回目となる今回のJMS。前回同様に“クルマ”にとらわれないさまざまなモビリティの形が提案されている。でも、大丈夫。今回もこれまでモーターショーに毎回足を運んできたクルマ好きが気になるような展示が目白押しだ。特に今回のJMSは近未来を打ち出していることもあり、実際に展示されている車両も、そう遠くない将来に発売されそうなモデルが多い。クルマ好きにとっては、これまで以上にリアリティーのあるショーともいえそうだ。

 

走るとCO2が減る

マツダブースでは、2台のコンセプトモデルが展示されている。ロータリーエンジンに二酸化炭素(CO2)回収システムを組み合わせた「ビジョンX-クーペ」は、走れば走るほどCO2が低減するという夢のようなクルマ。ロータリーでも環境に貢献できるんだ、というマツダの意地を感じる。デザインは「魂動デザイン」の王道といえるもので、特に驚きは感じなかった。

「ビジョンX-コンパクト」はリア周りのデザイン処理が個性的で新しい。現行の小型ハッチバック「マツダ2」は、改名前の「デミオ」時代を含めて、デビューからすでに10年以上が経過しており、そういう点でも興味深い展示だ。また、ブースではJMSが国内初披露となる来年発売予定の新型「CX-5」も展示しており、車内に乗り込んで仕上がりをチェックできる。

スバルブースで注目したのは、「インプレッサ」ベースの「パフォーマンスB STIコンセプト」。水平対向ターボエンジンに四輪駆動を組み合わせ、マニュアルトランスミッションを採用したという。オーバーフェンダーのデザインも上手くまとまっており、昔ながらのスバルのスポーツモデルといった仕上がりで市販されれば人気を集めそうだ。ほかにも日本では販売終了した新型「アウトバック」も、オフロード志向を強めた「ウィルダネス」仕様が展示されており、実車を確認できる貴重な機会となる。

さらにスバルブースでは、懐かしい2代目「レオーネ」が壇上に飾られている。これは「GLファミリー・ハックスター」というモデルで、米国のモータースポーツチームが1983年式GLファミリー(レオーネ・ツーリングワゴン)をベースに最新技術を投入。862馬力を発揮するという。レオーネをハイパフォーマンスカーに改造してしまうというのは米国ならではの発想だろう。40年前の旧車となれば、日本ならオリジナルにこだわりたくなる。

商用車メーカーのいすゞブースには、日本では馴染みが薄いピックアップトラック「D-MAX」が展示されている。ピックアップトラック市場が大きいタイでは、トヨタ「ハイラックス」とトップ争いをする人気モデルだ。2.2リットルディーゼルエンジンに8速ATを組み合わせるなど、最新技術を搭載している。日本でも販売できればハイラックス同様に一定の支持を集めそうだ。

 

分かりやすさが大事

海外勢で話題を集めているのが、中国・比亜迪(BYD)が初披露した軽スーパーハイトワゴンEV「ラッコ」だ。デザインはBYDらしく、最新トレンドを採り入れながらも癖がなく、幅広く受け入れられそうだ。

BYDブースには、プレミアムブランド「仰望(ヤンワン)」のEVスーパーカー「U9」が展示されている。市販車の世界最高速度記録を更新したという話題のモデルだ。スペックが派手なら、前後のライティングなどデザインも派手な印象を受ける。

メルセデス・ベンツは、新型「CLA」や新型「GLC」、AMGがプラットフォームから専用開発した「コンセプトAMG GT XX」など、EVを前面に打ち出す。気になるのはブースの奥にある「マイバッハSLモノグラム」。ボンネットやバンパー開口部などには無数のマイバッハのエンブレムが並ぶ。そしてグリル上部には「マイバッハ」と表記。さらにボンネットには、SLなのに後付けのようなスリーポインテッドスターまで直立する。分かりやすいというか、アピールが過ぎるというか…。

アパレルなどのハイブランドでは、ロゴなどを前面に打ち出した、ブランド主張を強めたデザインは定番となっている。ヤンワンU9と同様に、クルマの世界でも富裕層を取り込むためには、やり過ぎるくらいの分かりやすいアピールが求められているのかもしれない。

分かりやすい市販車といえば、西ホールにあるBMWブースの「M2 CS」も気になった。2ドアセダンのようなプロポーションに迫力のあるブリスターフェンダーなど、往年のスポーツモデルらしさが満点の見た目が特徴だ。極めつけはダックテール形状のトランクスポイラーで、やり過ぎでは?と思うほどに、そそり立っている。

BMWブースでも「2002ターボ」を展示するなど、今回のJMSでは、近未来だけでなく、伝統や歴史をうまく取り入れた展示が目立つ。主催者展示でも旧車などを集めた「タイムスリップ・ガレージ」を展開している。そういう点でも旧来のクルマ好きにとっては、大いに楽しめるショーといえそうだ。