8月1~3日に鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)で開かれた「第46回鈴鹿8時間耐久ロードレース」。夏休み期間ということもあり、会場には大人だけでなく子どもの姿も多く、親子の夏の思い出づくりの場となっていた。国内の二輪車市場では「リターンライダー」など年配のユーザーが増加した一方で、若年層の開拓は長年の課題となっている。二輪車メーカーは将来のバイクユーザーづくりの場と位置付け、子ども向けの展示製品やコンテンツを充実させるなど、二輪車の魅力を訴求している。
今年の8耐は3日間で6万1500人が来場。前年比では1割増となる。来場者のメイン層は40歳代だが、二輪車メーカーによると、もともと8耐への観戦に親子で訪れるケースも多いという。実際に会場には子どもの姿が多く、各社のブースに飾られているバイクを熱心にみたり、小さな体で大型バイクにまたがり写真を撮影するなど、思い思いにイベントを楽しむ様子が見られた。
二輪車メーカーは、8耐を子どものバイクファンを作る絶好の機会と考えており、会場のブースではさまざまな工夫を凝らしている。特に注力していたのがホンダで、子ども向けにホンダプロ仕様の「NSF100」や「GROM(グロム)」を展示。バイクにまたがった写真を撮影し、その場でステッカーとして渡すなど、家族の思い出につながるような企画を用意した。同プログラムに参加した親子は「子どもがバイクにまたがり楽しそうな笑顔を見せてくれたことで良い思い出となった」と喜んでいたという。
スズキは、8耐にサステイナブル素材を活用したパーツや燃料などを用いた「GSX-R1000R」で参戦し、ブース内に展示した同車両の横に「ミニバージョン」をサプライズで展示した。全長はGSX-R1000に比べて4割ほど小さい1264㍉㍍で、重量は29㌔㌘、ホイールは10㌅だ。同モデルを見た子どもたちは「乗ってみたい」「かっこいい」と興味津々だった。
8耐で各社がこうした取り組みを進める背景には、若者の二輪車ユーザーのさらなる開拓がある。日本自動車工業会(片山正則会長)が公表した2023年度の二輪車市場動向調査によると、二輪車購入者年代の平均年齢は55.5歳。購入者の比率でも10年前に比べると50歳代は32%(13年度は25%)、60歳代は28%(同21%)と増加している。一方、10歳代は1%(同4%)、20歳代は3%(同5%)、30歳代は6%(同10%)、40歳代は16%(同22%)と、低下しており、若年層に向けた魅力発信が課題となっている。
国内での二輪車市場を維持・拡大するには次代のバイクユーザーへの二輪車の認知度向上が欠かせない。ホンダの担当者は、今回の子ども向けコンテンツを通じ「バイクやレースの話題を、(レースの)会場だけではなく家庭でも自然に話してもらえることにつながってほしい」と期待を込める。幼少期の体験は将来の夢、将来の趣味につながる可能性もある。各社は二輪車のレースやイベントなどで子どもも楽しめるコンテンツを今後も企画していく考えだ。
(藤原 稔里)






