カー用品の小売り各社が、外国人の採用を拡大している。オートバックスセブンの子会社で人材サービスを手掛けるチェングロウス(湊川満也社長、東京都江東区)は、インドネシアで新たに整備士の育成に着手した。イエローハットも整備士や検査員としての採用を検討しており、長引く整備士不足が用品業界での外国人の活用を後押ししている格好だ。一方、アップガレージグループでは店舗での接客業務を含め、次世代のリーダー候補として育成に力を入れ始めた。用品業界にとって、人手不足は喫緊の課題になっており、外国人の活用拡大で成長戦略の実現につなげる狙いだ。
「日本人の確保が難しくなってきている」と、イエローハットの担当者は採用戦線の厳しさを打ち明ける。カー用品の小売店では製品を販売するだけではなく、車両への用品取り付けや車検の入庫などによる工賃収入が無視できない存在になっている。ただ、それを支えてきた日本人の整備士が足りなくなっている。少子高齢化の中で、〝3K(きつい、汚い、危険)〟というイメージが付きまとう整備士を目指す学生が減っているのが一因で、自動車流通に携わる事業者にとって大きな経営課題になっている。
このため、外国人に目を向ける用品小売り各社が増えている。イエローハットは、現中期経営計画の最終年度となる2028年3月期までに整備士と検査員を400人増員する計画を掲げた。このうち、最大2割程度(80人)が外国人になると想定している。日本人整備士の雇用が年々難しくなる中で、外国人を採用できなければ、同期に整備士と検査員の全体で1900人程度を目指す計画の達成に赤信号がともる可能性がある。
オートバックスセブンは、グループで長いスパンで外国人の新規採用に取り組んでいる。06年にフィリピンの教育機関と提携。これまで「外国人技能実習生」として累計500人以上、「特定技能1号」でも100人以上を受け入れた実績がある。このノウハウを生かし、新たなプロジェクトをスタートした。
インドネシアの労働省と24年、現地での整備士の育成で基本合意書を締結。その1期生として、すでに職業訓練センターで養成を始めており、25年中の来日を目指している。入国後は、全国のオートバックスセブングループの店舗で実務を行いながら、日本の整備士資格の取得に取り組むというスキームだ。フィリピンとのプロジェクトを長く手掛けてきたノウハウが店舗側にもある。プロジェクトの中核を担うチェングロウスの湊川社長は、「顧客から支持され、グループの戦力として活躍してほしい存在になる」と新たな人材にも一目置いている。
整備士以外にも活路を見いだしているのが、アップガレージグループだ。今春の新入社員は24人で、このうち外国人の割合は1割未満だった。これを、26年4月入社では2割に高める計画だ。同社が外国人の採用拡大を急ぐのは、人手不足の要因だけではない。実は29年3月期を最終とする5カ年の中期経営計画で打ち出した成長戦略の一つに、米国での海外出店の拡大がある。この新たなビジネスを成長軌道に乗せるには、外国人の活用が有効とみている。
人事・総務部長の張琳イ執行役員は、「事業拡大をよりスピードアップして実施するためには人的資本を一層強化する必要がある」とした上で、「中計の目標達成には今から育成していかなければ間に合わない」と強調する。外国人にも積極的に訴えるため、SNS(会員制交流サイト)を駆使して自社の情報や日本での就職活動の情報を発信する取り組みに力を入れる。手応えを感じており、「正直、留学生向けの採用イベントよりも圧倒的にSNSの方が有効だ」としている。
カインズ(高家正行社長、埼玉県本庄市)の子会社で、カー用品を取り扱うオートアールズ(野田晋作社長、埼玉県本庄市)も外国人採用を本格化する計画。具体的な人数は明らかにしていないが、「今後も継続して外国人の採用活動を行う予定」と力を入れていく方針であることには変わりがないようだ。
自動車用品小売業協会(APARA、小林喜夫巳会長)も人手不足の課題解決の一助に、外国人の活用があるとみている。5月の定時総会でも、外国人を含む多様な人材をターゲットにした採用方法や体験イベントの実施が有効との見方を示している。用品業界の魅力を発信し、イメージアップに取り組むことも求職者を増やす手段になるとみている。ただ、小林会長は、「一つの企業や団体だけではなかなか変わらない」と指摘。「他団体とも連携しながら進めていきたい」と、既存の枠を越えた活動が重要になるとみている。
厚生労働省がまとめた「外国人雇用状況」の届け出状況(24年10月末時点)によると、外国人労働者は前年に比べて12%増の230万人に、外国人を雇用する事業所も7%増の34万カ所に増えた。それぞれ届け出が義務化された07年以降で、過去最多となった。また、用品小売り各社が含まれる「卸売、小売業」は同13%増の29万8千人、サービス業のうち「自動車整備業」に従事する外国人も同21%増の5845人となり、業界にとって欠かせない存在になっている。
(梅田 大希)





 
         
         
         
         
        
 
           
           
           
           
           
           
           
           
           
              
              
              
              
              
              
              
              
             