緑色の「移動用小型車標識」を付与された三輪電動キックボード
時速6㌔㍍以下のため安全性が高い
道交法上は歩行者扱い

 ホンダ発のベンチャー企業で、次世代モビリティを手掛けるストリーモ(森庸太朗代表、東京都墨田区)が、特定小型原動機付自転車(特定小型原付)と異なる「移動用小型車」区分の電動キックボードの開発を進めている。最高時速が20㌔㍍の特定小型原付に比べ、同6㌔㍍に抑えることで歩道を走行できるモデルとなる。低速の移動用小型車は、高齢者でも使いやすいとみている。顧客の信頼を得るため、まだ実績の少ない型式認証も取得した。同社は年内をめどに、新たな電動キックボードを発売する計画だ。

 移動用小型車は、2023年4月の改正道路交通法によって生まれた車両区分。車体のサイズが全長120㌢㍍以下、全幅70㌢㍍以下、全高120㌢㍍以下の電動車が対象で、電動車いすなどが該当する。道交法上では歩行者として扱われるため、歩道もしくは、車道では路側帯の走行に限られる。国内では少子高齢化が進む中、シニア世代の外出機会の創出が社会的な課題となっている。このため、高齢者でも運転しやすいモビリティへの関心が高まっており、最高時速が6㌔㍍以下と低く、高い安全性が期待できる移動用小型車として電動キックボードを提供することを決めた。

 移動用小型車の開発は、すでに販売している特定小型原付の電動キックボードをベースにした。制御プログラムの変更を実施し、速度を抑えるなどした。ただ、森代表は「単純に最高速度を落としたわけではなく、誰もが操作しやすいようにプログラムを書き換えた」と、操作性にこだわった。

 例えば、動き出しの速度や坂を上る際のトルクなどを最適化。そもそも、同社の電動キックボードは三輪で、二輪の他社製に比べて安定感があることから、同行者と会話しながら移動できるという。森代表は「歩行者と共存できるモビリティ」と話す。

 移動用小型車に該当する車両は各社が投入している。ただ、同社が確認した範囲では型式認証を取得したモデルは2事例しかないという。ストリーモでは安全性や基本性能など「品質のお墨付きを得る」(森代表)ため、移動用小型車としての型式認証も取得した。認証取得に必要な項目にとどまらず、強度や限界性能の試験も実施したという。

 国の発表によると、24年9月時点の65歳以上の人口は3625万人となり過去最多だった。今後も少子高齢化の進展が予測される中、移動用小型車のような高齢者でも扱いやすいモビリティのニーズが高まるとみられる。

(舩山 知彦)