〝旧車〟の人気が続く中、補修やカスタム用パーツへの関心も高まっている。年式が古くなるにつれて、生産終了している純正部品が増えているためだ。安全な走行を担保する部品でさえも、入手の難易度が上がっている。また、経年劣化した部品を一新し、乗り心地を改善したいニーズも少なくない。旧車はかつての憧れだったモデルに乗りたいという中高年層をはじめ、若年層や海外からも注目が集まっている。新たなビジネスチャンスととらえ、古いモデル向けのパーツのラインアップを増やす市販用品のメーカーが目立っている。
2月に開かれた展示会「ノスタルジック2デイズ」(主催=芸文社)には、全国から多くの旧車が集まった。貴重なモデルを見ようと来場した人数は2日間で前年比5.0%増の4万2561人。ここ数年、増加傾向となっており、ユーザーの旧車への関心の高さを裏付けた。
加えて、最近では実際に旧車のオーナーになった人も増えているようだ。市販シートのブリッド(高瀬嶺生社長、愛知県東海市)の担当者によると、「新商品がいつ発売になるのか、早く買いたいという声が多くなっている」としている。旧車のパーツ需要の底堅さを示す。純正部品が手に入りにくくなっていることも、市販メーカーにとっては追い風だ。
また、旧車向けパーツの市販品では、最新の技術を活用したものも人気だ。自動車産業の黎明(れいめい)期を支えたクラシックカーを得意とする國森モータース(國森裕也代表、長野県茅野市)は、最近のユーザーの傾向について「所有者の年齢層が上がり、身体の負担を和らげたい声がある」と明かす。そこで、今の技術を使ったシートやサスペンションを装着することで、乗り心地の改善を目指す動きが出ているという。
こうした旧車ユーザーの声に応える商品の開発に力を入れる市販メーカーも広がっている。例えば、ブリッドは1970年以降に生産された車両向けのシートを、年内をめどに発売する。「乗り心地を改善しつつ、純正品の意匠を損なわないデザインとした」(担当者)ことで、旧車に馴染むような工夫を盛り込んだ。テインが開発した英ケータハム「スーパー7」専用のサスペンションは「電子制御システムを採用した」(担当者)ことで、性能向上を実現した。
エッチ・ケー・エス(HKS)も旧車に現代の技術を取り入れる〝レストモッド〟に力を入れる一社。内燃機関の構成部品づくりに取り入れ、高品質化に力を入れる。藤壺技研工業(藤壺政宏社長、横浜市西区)も、従来よりも排気性能などを高めたマフラーを提供している。旧車用パーツは今後、いかに付加価値の高いものを発売できるかも市場拡大の鍵となりそうだ。
(後藤 弘毅)