日本損害保険協会(損保協、城田宏明会長=東京海上日動火災保険社長)は4日、「修理工賃単価に関する対話・協議のあり方にかかるガイドライン」を発表した。保険修理の工賃算出に用いる「指数対応単価」はこれまで、「消費者物価指数(CPI)」を指標としてきたが、その他の要素も考慮して定期的に見直す。また、整備事業者に協議を求められても、それだけで不利益な取り扱いをしないよう記している。工賃単価の問題は国会でも取り上げられ、損保側と整備団体による団体交渉も行われている。損保業界の大きな原則を示すことで、透明性を高める考えがあるとみられる。

 大手損保が指数対応単価の指標を原則、CPIとしてきたのは、「自動車の修理費はユーザーが負担するもので企業間取引ではなく、CPIを用いるのが妥当」との考え方だ。ただ、過去にCPIが低下した時、中小規模が多い整備業者を考慮し、指数対応単価を下げなかったこともある。これまでも一定の配慮を行ってきたが、今回のガイドラインで正式に方針転換した。

 また、従来は「保険会社と整備工場は直接の契約はないため、企業間取引ではない(このため、CPIを指標とするのが妥当)」という考えもあった。これも正式に見直した。ガイドラインの中で、「損保と整備事業者の間には民法上の契約関係は存在しないが、顧客の利便性の観点から事故車修理費用については損保と整備事業者との間で直接支払いの長年の慣行がある」と認めた。これらの理由から、CPIのみを指標する方針を変えた。激しい物価高騰や大手企業を中心とした賃金上昇、整備業界の深刻な人手不足、取引上弱い立場にある中小企業の公正な取引を重視する政府の方針などを考慮したとみられる。

 ガイドラインの中では、整備事業者も損保も、数字の根拠資料を作成・提示した上で話し合いをすることを求めている。損保側は、担当部署のみではなく、会社全体として経緯を把握し、交渉の経緯などについても検証できるように記録を残すことも求めた。

 損保大手各社は現在、日本自動車車体整備協同組合連合会(日車協連、小倉龍一会長)と団体交渉を行っている。