ミネベアミツミは、スタートアップと共同で〝次世代パーキング〟の実証実験を東京・六本木で開始した。完全キャッシュレス化をはじめとした利便性を向上するサービスのみならず、ヒートアイランド現象を抑える舗装を採用したり、災害時の電源供給や物資供給拠点としての機能も導入するなど、環境への配慮や災害対応にも取り組んだ。持続可能な都市づくりに貢献するパーキングとして提案しながら、本格展開を目指す。
次世代パーキング「EcoloPark+」(エコロパークプラス)の実証は1月末から実施。エコロシティ(山本麻理社長、東京都港区)、プラグテック(舩本俊隆代表取締役、同千代田区)、Hakobune(ハコブネ、高橋雅典社長、同)、サイプレイス(難波仁志代表取締役、東京都中央区)および、ミネベアミツミの5社が共同プロジェクトとして展開している。
そこでは、ミネベアミツミのセンサーやネットワーク技術、プラグテックのソフトウェア型サービス、ハコブネの電気自動車(EV)専用カーシェアリングサービス、サイプレイスの多機能LEDサイネージ、エコロシティの駐車場管理運営ノウハウを融合。街に安心・安全な空間を提供する〝やさしい次世代パーキング〟の姿を形にした。
ハード面ではまず、環境問題に配慮して舗装材料に遮熱性舗装「ミラクールロードM」を採用。路面温度の上昇を最大セ氏8.2度抑えられるため、夏場のヒートアイランド現象の緩和につながる。駐車場の新設や改修時にこの舗装材料を使えば、冷房装置のエネルギー消費を抑え二酸化炭素(CO2)排出量の削減が見込めるという。
さらに、ハコブネのEVカーシェアにより、平時には走行中のCO2排出をゼロ化。災害時にはEVのバッテリーを非常用電源に使用して地域を支援する防災拠点として機能させる。
高齢者や家族連れも安心・快適に利用できるように、駐車スペースの幅を2800㍉㍍と広めに設計。乗降が楽になり、駐車操作での切り返しを減らせる。そして駐車にかかる時間も減らし、燃料消費と排出ガスの削減を図れるとする。
料金収受は、プラグテックの次世代パーキングシステムで完全キャッシュレス化を実現。精算機とロック板が不要になり、運営コストを削減できる。利用者は車内での決済が可能となるほか、ロック板で車が傷つく心配がなくなり、利便性が高まる。将来的にはダイナミックプライシングによる柔軟な料金設定を目指す。
照明には、センサーで明るさを自動調整するミネベアミツミの「スマートLED照明」を採用した。人気の少ない場所や時間帯での無駄な電力消費を抑えつつ、地域の防犯向上にも貢献する仕様となっている。合わせてリアルタイム情報を表示できるサイプレイスのLEDサイネージを設置し、災害時の情報提供体制を整えた。
このように、高齢化や地球温暖化をはじめとした今後の社会問題を見据えて、利便性の向上や環境負荷の低減、地域貢献を年頭に置き、最小限の資材でGX(グリーントランスフォーメーション)を実現できる駐車場につくりこんだ。
エコロシティの戦略アドバイザーで公共政策に詳しい慶應義塾大学の上山信一名誉教授は「モデルケースとして、大変意義深い。遮熱性舗装の導入や再生可能エネルギーの活用は、都市環境の改善とカーボンニュートラル社会の実現に向けた重要な一歩。他地域への展開も期待される。駐車場が災害時の電源供給拠点や物資の集積拠点としての役割を担うという視点は、持続可能な社会インフラを再定義する新たな取り組みとして注目に値する」と取り組みを評価した。
(編集委員・山本 晃一)