自動車事故対策機構(ナスバ、中村晃一郎理事長)は、交通事故の被害者やその家族らが制作した写真・絵画・書道作品などの展覧会「ナスバギャラリーIN東京」を2020年から定期開催している。日本自動車会館(東京都港区)を会場に、日本自動車会議所(内山田竹志会長)と共催するもの。昨秋には同会館では6回目となる展覧会を催し「令和5年度『ナスバ交通遺児友の会』写真コンテスト」の最優秀賞をはじめ、約40作品を披露した。
中村理事長はギャラリーの狙いについて、交通事故防止の訴求と同時に、事故被害者らが作品で表現する〝たくましさ〟を感じてもらうことにあるという。
作品を創作する事故被害者の中には、大切な家族を失った遺族や、重度の後遺症でナスバの療護センターに入所した人、自宅で介護を受ける人などがいる。その人たちは「『何かを失われた方々』であるが、写真や絵画、書道などの活動に取り組み、作品を生み出している。その前を向いてクリエイティブなものを生み出しているというたくましさ、強さが、勇気を与えてくれる。ぜひ作品を通じて感じていただきたい」と思いを語った。
同会館でギャラリーを継続する意義も大いにある。中村理事長は「自動車メーカーもユーザーも、そしてわれわれも交通事故をなくしたいという思いは皆一緒だ。だからこそ、(自動車業界の関係者が広く集う)日本自動車会館で開催していきたい」と抱負を述べた。
ナスバは交通事故の分析と同時に、被害者支援活動も展開する世界で唯一の組織となっている。被害者支援の認知を広めることを目指して23年度から広報活動を活発化。マスコットキャラクター「ナスバちゃん」の制作をはじめ、一般にも向けて活動の訴求に乗り出した。
24年の交通事故死者数は2663人で前年から15人減少した。しかし、いまだに2500人を超える人らが、自動車の不適切な運転などに起因する事故で尊い命を失った。ナスバは今後もさまざまな機会を通じて交通事故被害者らの思いを発信し、事故のない交通社会づくりに貢献していく考えだ。