導入したEVに充電する遠軽信金の市川理事長(右)と北海道三菱の下村社長

北海道遠軽町に本店を構える遠軽信用金庫(市川裕記理事長)は、大規模停電時に電気自動車(EV)の電力でATMを稼働する仕組みを導入した。北海道三菱自動車販売(下村正樹社長)と協業し、札幌、旭川、北見の主要店舗に軽自動車規格のEVと駆動用バッテリーの電力を外部に給電できる「V2H(ビークル・トゥー・ホーム)を導入した。将来的には全店舗にEVを配備し、2018年の胆振東部地震で発生した大規模停電、ブラックアウトのような場合でもATMを利用できるようにする狙いだ。

遠軽信金によると、道内の金融機関で同様の取り組みは珍しいという。災害発生時には、導入した三菱自動車の軽EV「eKクロスEV」の電力でATMを稼働したり、地域住民が携帯電話を充電したりする計画だ。2台導入した札幌市西区の宮の沢支店では、EVの電力でATMを3日間動かせるという。

1月30日に同支店で実施した報道向けの発表会で市川理事長は、EVとV2Hの導入の狙いについて「BCP(事業継続計画)対策が最大の目的。(EVの電力を活用して)地域貢献、顧客満足向上につなげたい」と話した。

将来的には全店舗にEVを導入する。まずは、本店と札幌、旭川、北見の各エリアで主要店舗に計9台のEVを導入する。V2Hも宮の沢支店のほか、旭川、北見の店舗で近く設置工事が完了する。

同社は現在、社用車65台を使用しており、順次EVに切り替えていく考え。長距離移動が発生するケースも少なくない事からハイブリッド車を組み合わせながら、業務に支障が出ないように車両配置計画を立てるという。

太陽光発電設備の導入も進める。23年に新規開店した千歳支店は、自家消費型の太陽光発電、蓄電池、EVを導入した。今年はさらに3店に太陽光発電を導入する予定だ。

北海道三菱の下村社長は「太陽光発電の余剰電力をEVに充電し、電力が足りないときには取り出すなど、エネルギーマネジメントにもなる。(EVとV2H導入は)BCP対策に加え、カーボンニュートラルへのチャレンジにもつながる」としている。