「ライダーメーカーとして認められるように尽力する」と話す加藤社長
2026年から量産する短距離ライダー

 車載用LiDAR(ライダー、レーザースキャナー)の量産に乗り出す小糸製作所。ライダー事業を収益の柱に育てるとともに、主力の自動車用ランプ事業との相乗効果も見込む。ライダー事業への設備投資は2030年までに数百億円規模になる。子会社化した米スタートアップのセプトン社と開発や営業体制を強化する方針だ。

 小糸が量産するのはセプトン社と共同開発した検知距離300㍍の長距離ライダーと同40㍍の短距離ライダーだ。長距離ライダーは27年の量産開始予定で、国内工場に生産ラインを新設する。加藤充明社長は「欧州で27年度以降に白線のレーンキープで150㍍先まで確認できることが法制化された。車載カメラでは不十分なケースもあるため、ライダーに対する引き合いが強まっている」と期待する。

 短距離ライダーは26年から量産する。自動運転「レベル4(特定条件下における完全自動運転)」車両の周辺監視用として開発し、すでに海外自動車メーカーに採用された。25年に静岡県内の工場に少量生産ラインを新設し、順次、生産規模を増やす。ライン当たりの年産能力は約10万個を見込む。受注に合わせ、海外を含め生産体制の拡充を検討していく。

 7日(米国現地時間)に子会社化したセプトン社を交えながら開発や営業部隊など組織体制も強化する予定だ。

 小糸は、30年までにライダー事業で年間売上高500億円を目指す。加藤社長は「ライダーメーカーとして当社とセプトンが認められるように尽力する」と決意を示す。

 小糸がライダー事業に力を入れる背景の一つとして、主力製品の自動車用ランプとの相乗効果と収益源の多様化への期待がある。ライダーを組み込んだヘッドランプなど部品の高付加価値化を目指す。

 ただ、競合の市光工業も親会社の仏ヴァレオが持つセンサー類などとのシナジー創出に取り組んでいるほか、スタンレー電気も三菱電機モビリティ(加賀邦彦社長、東京都千代田区)と共同出資会社を設立し、先進運転支援システム(ADAS)や次世代車向けランプの開発を本格化する。競合他社がひしめく中で小糸はセプトン社と共に、どれだけ早く競争優位に立てるかがカギとなる。

 ライダーは、自動車以外にもさまざまな用途に用いられる。富士キメラ総研(田中一志社長、東京都中央区)によると、世界市場は30年に23年比で6倍超の7200億円に拡大する見通しだ。小糸でも、車載以外のライダー利用の問い合わせも30件超あり、サンプル出荷も始めた。同社として、自動運転化が進む建機や農機、フォークリフトなどへの搭載を期待するほか、商業施設などの混雑状況を把握する移動体検知システム「イルミエル」の拡販など、ライダーの用途開発にも力を入れていく考えだ。

(梅田 大希)