出光興産は28日、全固体電池の材料である固体電解質を年間数百トン規模で試験的に製造する大型パイロット装置の基本設計を開始したと発表した。固体電解質の生産としては世界トップクラスの規模となる。2025年には最終投資を判断し、順調に進めば27年に装置が完成する予定。トヨタ自動車が早ければ27年にも実用化を予定する全固体電池を搭載した電気自動車(EV)向けに供給する計画だ。

 大型パイロット装置は千葉事業所(千葉県市原市)の敷地内に設ける予定。すでに7月から整地工事に着手している。合わせて大型パイロット装置の設置や供給体制の整備を目的に、リチウム電池材料部に「パイロット準備室」を新設した。

 全固体電池は電解質が固体のリチウムイオン電池で、高電圧・高温に強いため、エネルギー容量を高めても発火するリスクが低く、寿命も長い。EVの充電時間短縮や電池サイズを維持しながら航続距離の延長が可能となる。出光は全固体電池の重要材料である固体電解質を開発しており、現在は千葉県に設けた2つの小型実証設備で、量産技術を開発するとともに、自動車メーカーや電池メーカーなどにサンプル出荷している。今後、製造規模をスケールアップできる大型パイロット装置を稼働して事業化する計画だ。

 出光が手掛ける固体電解質は、石油製品の製造過程で副次的に発生する硫黄成分を原料に製造する。近く原料となる硫化リチウムの製造能力増強の決定も予定している。