会見するトヨタの佐藤恒治社長(左)と出光興産の木藤俊一社長

 トヨタ自動車は12日、電気自動車(EV)に搭載する全固体電池の量産で出光興産と協業すると発表した。トヨタは自前で全固体電池を開発中だが、同じく全固体電池の量産実証を進める出光と手を組み、課題が多いとされる量産技術の確立を急ぐ。2028年までの実用化を目指す。トヨタの佐藤恒治社長は「クルマの未来を変えるカギは、自動車とエネルギー産業の連携だ」と語った。

 今回の協業内容は、第1弾として全固体電池に用いる固体電解質の共同開発と、出光が持つ生産ラインでの量産実証を行う。固体電解質は、高容量かつ高出力化が可能な硫化物系を用いる。第2弾では、共同開発した硫化物固体電解質を用いた全固体電池をトヨタが開発する。出光は量産実証装置を立ち上げ、第3弾で量産に向けた検討を両社で進める。

 トヨタが開発中の車載電池は4種類ある。この中で27~28年までの実用化を目指す全固体電池は最も高性能だ。電解質が固体のためにイオンの動きが早く、液系に比べて高電圧や高温への耐性も強い。小型化も可能だ。ただ、課題として耐久性の確保やコスト削減、さらに量産技術の確立が挙げられる。トヨタは、石油精製過程の副産物を活用した固体電解質や量産技術の開発を進めてきた出光と手を組み、全固体の量産を急ぐ。

 出光は、売上高の8割を「燃料油」事業が占める。ただ、電動車シフトやカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)の進展で燃料事業の先細りは避けられない。同社は、30年度に燃料油事業と石油・天然ガス開発事業の「化石燃料事業」の収益比率を5割以下にする目標を掲げるなど、事業構造の転換を急いでいる。全固体電池向けでは、90年代前半から中間材料である「硫化リチウム」の開発に取り組んできた。全固体を燃料事業を補う事業の柱に育てたい考えだ。

 全固体電池は日産自動車やホンダも開発を進めている。両社は、24年に試作用の生産ラインを設ける計画だ。足元のEV販売では新興勢や中国勢に出遅れている日本メーカーだが、全固体電池の研究開発ではなお先行する。トヨタと出光の協業は、量産技術開発にとどまらず、生産性の向上やサプライチェーン(供給網)構築も視野に入れており、全固体電池で他社をリードしたい考えだ。