アイシンは、新たなハイブリッド機構を開発した。主にトヨタ自動車向けに納入するハイブリッド機構をベースとし、発電用のモーターを駆動軸から切り離すクラッチを追加することで「電力消費(電費)」を従来より2%向上させた。モーター走行の長距離化を競うプラグインハイブリッド(PHV)向けを想定し、2027~28年の投入を目指す。
ハイブリッド機構には、①エンジンを発電機として用い、モーターで駆動する「シリーズ式」(日産自動車のeパワーなど)②モーターを補助動力として用いる「パラレル式」(国内外のマイルドハイブリッド車)③2つのモーター(発電用/駆動用)を持ち、必要に応じて発電用モーターを駆動軸から切り離せる「シリーズパラレル(シリパラ)式」(ホンダのe:HEVやBYDのPHV機構)などがある。
トヨタのハイブリッドシステムは、③のシリパラ式にプラネタリーギア(遊星歯車)による動力分割機能を加えた「スプリット式」と呼ばれるものだ。遊星歯車を介し、エンジンとモーターそれぞれ効率の良い領域を使えるため、ハイブリッド走行時の燃費に優れる半面、電気自動車(EV)走行時には遊星歯車や発電用モーターの抵抗が残る課題があった。
アイシンの新機構は、スプリット式をベースに、遊星歯車部に切り離し機構を追加することで、高い燃費性能を維持しつつ、EV走行時はシリーズ式と同様の電費性能を実現するものだ。追加するのはクラッチとアクチュエーター(作動器)のみにとどまり、大幅なコスト上昇も避けられる見通し。
利便性や価格などの面でEV需要が足踏みする中、燃料高を背景に燃費改善効果の高いシリパラ式のハイブリッド車(HV)が世界で売れている。一方で、性能面でEVに近く、電欠して立ち往生する心配が少ないPHVも改めて注目され始めており、中国勢がこぞって新型車を投入している。
ただ、PHVの場合、EV走行距離を延ばすため電池容量を増やすと車両価格が上がるジレンマもある。アイシンは、電池容量を増やさずに航続距離を延ばす電費向上技術を磨き、PHVの商品力向上につなげる考えだ。