日本自動車査定協会(日査協、大井篤理事長)が、動画共有サービス「ユーチューブ」を活用した中古車査定の情報発信に取り組んでいる。車両の修復歴の判断基準などをまとめた動画を今春、公開した。一つひとつは10分程度の短い時間で、査定のポイントを確認できる構成となっている。実はここ数年、査定に関する誤った情報がインターネットで流れていたという。中古車市場での無用なトラブルを防ぐためにも、正しい査定知識を自ら発信して業界の信頼向上につなげる狙いだ。
日査協がユーチューブの公式チャンネルで公開している動画は、査定士の研修で用いるテキストなどを基に制作した。現在、10本が視聴可能となっている。それぞれ「アバター(分身)」と呼ばれるキャラクターが講義形式で解説することで、視聴者に分かりやすく査定のポイントを伝えるように工夫した。
例えば、ピラーの修復歴をテーマにした動画では、部品の名称や取り付け位置といった基本的な知識からアバターが説明。その上で、ピラーの損傷が修復歴に該当する場合、該当しない場合のそれぞれを実車の画像を用いながら解説していく。一般の関心も高いとみられるルーフやクロスメンバーをテーマにした動画も用意した。
また、大型トラックや小型トラックといった商用車を題材にした動画も制作した。大型トラックの動画では、損傷が起きやすい部位など具体的な実例を挙げ、査定上で確認するべき点を紹介している。
日査協がこうした取り組みを行っている背景には、査定に関し一般に広がる誤った情報の拡散を防ぐ狙いがある。こうした情報に触れたユーザーからの問い合わせもあるという。誤った知識や情報が広がれば実際の車両の取引でも誤解が生じ、トラブルを招きやすい。査定の意義や役割を正しく伝えていくことで、「透明性のある業界づくりに貢献していきたい」(担当者)考えだ。
現在の動画配信は、トライアル的な位置付けだという。日査協は視聴者の反応などを探り、品質の高い動画づくりに役立てていく予定だ。
(舩山 知彦)