路側設備で、自動運転に必要な情報や機能を補完していく(イメージ)
自動運転車をスムーズに合流させるシステムの実証風景

 Q 自動運転と道路は何か関係あるの?

 A 自動運転というと、確かに〝クルマの技術〟というイメージですが、クルマのカメラやセンサーでは捉えきれない情報などを道路側の設備がカバーすると、より安全に走れるため、それなりに技術開発の歴史があります。日本では「走行支援道路システム(AHS)」「スマートウェイ」などとして、建設省(現・国土交通省)が1980年代から研究や実証を進めてきました。ただ、AHSは整備コストがかさむため開発はしだいに下火になり、ETC(ノンストップ自動料金収受システム)の開発や高度化に力を入れてきた経緯があります。その後、クルマ側の開発が進み、道路に求められる要件もより明確になったため、再び開発機運が高まっているというわけです。

 Q 道路が自動運転車に提供できる情報は何がある?

 A 高速道路の場合だと、料金所情報、合流情報、落下物情報、車線別の交通情報、工事規制情報、サービスエリア(SA)・パーキングエリア(PA)の駐車満空情報、そして気象情報などがあります。高速で円滑に自動運転するには、車載センサーなどでは検知が難しい、より遠方の交通状況を把握し、車両を制御する必要があります。このため、リアルタイムでの道路交通情報の収集・解析・提供体制が不可欠になってくるのです。

 Q 道路側による自動運転車支援技術は何があるの?

 A 自動運転車の車両位置を特定する技術では、磁気マーカーや電磁誘導線などがあります。あらかじめ道路にそれらを埋め込み、車両側のセンサーで検知することで、降雪で白線が見えなかったり、GPS(全地球測位システム)電波が届かないトンネルなどでも高い精度で自車位置を把握することができます。このほかにも、自動運転車をスムーズに合流させるため、高速道路の本線に設置した複数のカメラが走行車の速度や位置などを検知し、それらの情報を自動運転車に提供するシステムを官民で開発しました。

 Q でも、そうしたインフラを整備するには予算が必要だね?

 A 各省庁では、さまざまな補助制度を設けて自動運転の実現に取り組む自治体、民間企業、研究機関・団体などの実証を支援しています。人口減少や運転手不足などを背景に公共交通網の縮小に悩む地方では、自動運転技術の社会実装が、こうした社会課題の解決にもつながるとして期待されるところです。道路も含め、自動運転の社会実装に向けた政府の関連予算額は年々、増加しています。

 Q 「自動運転サービス支援道」を整備する動きも、そういった取り組みの一つかな

 A はい。道路に通信設備などを備え、自動運転「レベル2」(高度な運転支援)から「レベル4」(特定条件下での完全自動運転)の商用車を走らせるという計画です。政府は、自動運転サービス支援道の整備を通じて、トラックの運転手不足や移動制約者の増加といった社会課題の解決を目指す考えです。自動運転車の開発や関連するサービス産業の創出を間接的に後押しする効果も見込みます。

 Q 具体的にはどう進めていくの?

 A 高速道路では、2024年度に新東名高速道路の駿河湾沼津~浜松間(約100㌔㍍)に自動運転サービス支援道を整備し、26年度までに東北自動車道など仙台~東京間に広げます。33年度までには東北~九州間に整備します。一般道では、24年度から茨城県日立市のJR大甕(おおみか)駅周辺で自動運転バスの運行を始めます。一般道では、自動運転車を常時、運行できる地域を26年度までに50地域、33年度までに100地域以上に増やす計画です。

 Q 運転手不足の解決に役立ちそうかな?

 A 一定の対策にはなりそうですが、いわゆる「無人運転」はまだハードルが高く、大型免許などを持つドライバーが同乗する必要が当面は残りそうです。このためか、国土交通省では、高速道路の中央分離帯や地下空間などを活用し、自動輸送カートや自動運転車などで荷物を運ぶ「自動物流道路」の検討を始めました。2月に官民検討会を立ち上げ、技術開発や法制度、事業スキームなどの議論を進めています。想定ルートを含めた中間とりまとめを今夏に公表し、10年後に一定規模での実現を目指しています。