店舗投資も積極化する方針

 日産自動車は25日に発表した2026年度までの次期3カ年計画で、国内販売台数を60万台に引き上げる目標を盛り込んだ。5車種の新型車を投入し、販売増に取り組む。最終年度に計画を達成すれば、12年ぶりに60万台の水準に回復することになる。新型車の投入減少や燃費・排出ガス不正などで、長らく厳しい時代が続いた日産の国内販売部門が、ようやく浮上できるのか。国内の流通関係者からの注目を集めている。

 日産の新車販売台数は、14年度の62万台を最後に、60万台を下回る状況が続いている。直近の22年度は45万台にとどまった。日産の国内販売は、〝ゴーン時代〟に新型車の投入サイクルが長期化したことや不正の問題が響き、代替需要の母数となる保有台数が減少。

 さらに、17年に完成検査問題、18年に燃費・排ガス不正問題が相次いで発覚。メーカーによる出荷の一時停止やブランド力が低下した。その結果、新車が売れず、さらに保有が減少する悪循環となったため、販売量が下降の一途をたどっている。日産車の保有台数の推移をみると、20年3月末に879万5千台で、10年前と比べて66万台も減少した。

 次期経営計画では、新型車の投入攻勢で、この負のスパイラルに歯止めをかける。一部改良を含め、乗用車のラインアップのうち80%の商品に手を加える計画。このうち、5車種は全面改良や新モデルとなる。電動車の投入も加速する方針で、乗用車に占める電動モデルの割合は、7割になる見通しだ。有力販売会社の首脳も「クルマが出ればわれわれは台数を出せる」と、販売拡大に向けた意気込みを示している。

 ただ、目標達成には、懸念材料もある。日産の販売会社はこれまでの販売低迷で、人員をスリム化している。このため、新商品や改良車の発売時期が集中すれば、新型車効果を生かしきれない可能性がある。あるディーラーの首脳は「効率的な『チーム営業』で販売を最大化できるように取り組む」としているものの、「メーカーには商品投入の時期を平準化してもらいたい」と要望する。

 今では登録車と軽自動車を合わせたブランド別のシェアは、5位が定位置になっているが、かつては「確固たる2位」を国内販売のスローガンに掲げていた日産。人口減少や免許返納などで、今後も新車市場の大きな伸びは期待できないものの、22年には販売会社との特約店契約を改定し、店舗投資の積極化などを盛り込むなど攻めの姿勢に転じている。日産が60万台の目標を達成できれば、再び上位に食い込む可能性もありそうだ。