2023年業績を説明するメルセデス・ベンツのオラ・ケレニウスCEO

 メルセデス・ベンツは、2030年に新車販売の全てを電気自動車(EV)にする目標を取り下げた。多様な顧客ニーズに応えるため、30年以降も当面は内燃機関搭載車の販売を継続する。全車EV化は21年に発表したが、EVの販売ペースが鈍化していることを背景にわずか3年で方針転換を余儀なくされた。オラ・ケレニウスCEO(最高経営責任者)は「市場に製品を押しつけることで人為的に目標を達成しようというのは理にかなっていない」と語った。

 このほど発表した2023年12月期決算とともに明らかにした。メルセデス・ベンツは21年7月、「市場が許す限り」という前提つきで30年に全てEVにする目標を発表した。目標達成に向け「EQ」シリーズの展開を急いだが、23年はドイツでEVの補助金が突如として終了したこともあり、プラグインハイブリッド車(PHV)を含めたEVの販売比率は前年比3㌽増の19%にとどまっていた。

 こうした状況を踏まえ、30年目標を撤回するとともに、PHVを含めたEV比率を5割に引き上げる計画の達成時期も従来の25年から「20年代後半」に変更した。急速なEVシフトからの揺り戻しが自動車メーカーの電動化戦略に影響を与え始めた格好だ。

 23年の連結売上高は前年比2・1%増の約1532億 ユーロ (約25兆円)、EBIT(利払い・税引き前利益)は同3・2%減の約200億 ユーロ (約3兆3千億円)、純利益は同1・9%減の約145億 ユーロ (約2兆4千億円)だった。乗用車部門「メルセデス・ベンツ・カーズ」の販売は約204万4千台(同0・2%増)だった。24年もカーズ部門は同水準の販売を見込む。EV・HV比率は19~21%の予想で、調整後売上高利益率(RoS)は23年の12・6%から24年は10~12%へとやや低下する見込みだ。