今年、販売予定の自動運転車「ティアフォー シャトルバス」

 自動運転ソフトウエアなどを手がけるティアフォー(加藤真平社長、名古屋市中村区)は今後の事業戦略を明らかにした。「自動運転車の開発・運行受託」「商用車メーカーとの共同車両開発」「自動運転関連のコンサルティング」を3本柱とする。日本政府が計画する自動運転サービス(2027年度に100拠点)の過半にも参画し、商機をつかむ考え。自動運転スタートアップの苦境も伝えられる中、同社は利益を伴う成長を優先させ、将来の新規株式公開(IPO)に備える。

 同社は名古屋大学発のスタートアップで、ヤマハ発動機やブリヂストン、SOMPOホールディングスなどの出資も受けている。無償でプログラムを公開するオープンソースでのソフト開発が特徴で、昨年10月には自動運転「レベル4」(特定条件下における完全自動運転)の認可を国内で取得した。

 自動運転ソフト「オートウエア」に加え、昨年から自動運転車「ファンファーレ」の展開を始めた。架装メーカーのトノックス(殿内荘太郎社長、神奈川県平塚市)と組んで既存の車両に自動運転機能を実装したものだ。小型バスや商用車など、2024年には9車種を展開し、25年には300台の生産を目指す。

 今年は、自動運転AI(人工知能)開発のデータ共有プロジェクト「Co―MLOps(コーエムエルオプス)」を本格的に立ち上げる。世界8地域のカメラ画像やLiDAR(ライダー、レーザースキャナー)の点群データを共有し、開発の効率化と高精度化を目指す構想だ。米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)や英アームのプラットフォームも活用する。また、カメラ類やライダーなど、レベル4級の自動運転に必要な製品や技術を提供する開発プラットフォーム「エッジ.オート」も始めた。

 2026年~28年には「自動運転車の開発・運行受託」「商用車メーカーとの共同車両開発」「自動運転関連のコンサルティング」を3本柱とし、足元で20億円ほどの売り上げ規模を数倍に伸ばす考えだ。

 特に収益面ではサブスクリプション(定額利用)によるソフト提供や点検整備を見込む自動運転車の運行受託件数の拡大に期待する。

 旅客や貨物など世界でさまざまな自動運転スタートアップが技術を競う。ただ、今月に入ってトラックの自動運転を手がける中国発のトゥーシンプルが商用化の遅れから米ナスダック市場で上場廃止に追い込まれた。成長期待から資金を集めやすいことは確かだが、「レベル3」(条件付き自動運転)以上の車両は、走行速度が上がったり、自動車専用道路から一般道などへ走行範囲を広げるほど実運用のハードルも上がる。ティアフォーは開発投資と収益のバランスを重視しながら事業を拡大し、将来的なIPOを目指す考えだ。

(2024/1/25修正)