自動車事故は増加している

 大手損害保険3グループが20日発表した2024年3月期連結決算は、各社とも過去最高益となった。海外の保険事業が好調な上、株高の中で金融庁の指摘を受けて加速させている政策保有株の売却も大きかった。一方、本業の国内保険事業は、自動車保険が交通量の増加や物価上昇の影響で支払い保険金が増えるなどし、収益が悪化傾向にある。また、3グループとも売上高に当たる正味収入保険料も過去最高だった。

 東京海上ホールディングスは、北米での賠償責任保険などの企業向け商品、ブラジルでの自動車保険の販売などが好調だった。MS&ADインシュアランスグループホールディングスは、赤字続きだったMSアムリン(本社・英ロンドン)が経営改革で業績が改善したことが大きかった。SOMPOホールディングスも農産物の価格下落による農業保険の減収はあったが、北米やトルコの事業で増収となった。円安が進んだことで、各社とも円に換算した利益額が膨らんだ。

 一方、国内の保険事業は、収益が悪化している。各グループの中核子会社の正味収入保険料の半分程度を占める自動車保険の影響も大きい。新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが「5類」に緩和されたことで、車の移動が増えて交通事故が増加。さらに、車の高額化や物価上昇で修理にかかる資材費、人件費などが上がったことも大きな要因となっている。

 自動車や火災など保険事業全体の収益を示す「保険引受利益」は、あいおいニッセイ同和損害保険は331億円の赤字になった。同社は自動車保険の比率が高いため、支払保険金が増えたことが重荷になった。25年度まで厳しい状況が続きそうだという。

 また、各社とも長年赤字傾向にあった住宅向けの火災保険を10月から1割程度値上げするが、長期契約が多いため短期間での収益改善効果は限定的だとしている。

 25年3月期の連結業績見通しは、東京海上HDとMS&AD HDは最高益を更新する見込み。政策保有株式の売却益などが利益を底上げする見通しだ。

 ただ、SOMPO HDは、大幅な減益を見込んでいる。同社も政策保有株式の利益を見込んでいるものの、自動車保険での支払い単価の上昇やシステム開発の先行投資で、利益が下振れするとみている。