業界の景気回復には使用済み車の発生量増加が欠かせない

 自動車リサイクル促進センター(JARC、細田衛士理事長)によると、2023年の使用済み自動車の発生台数が前年比約1・4%減の約273万1千台となり、2年連続で前年割れしたことが分かった。新車の供給制約の改善が進み、使用済み車の発生源にもなる下取り車や買い取り車が増えている。単月では同年12月まで5カ月連続でプラスを維持したが、前半の遅れをカバーしきれなかった格好。ただ、使用済み車をめぐっては、中古車オークション(AA)や輸出などとの取り合いが激しいことに変わりはない。リサイクル事業者の仕入れ環境の改善には、もう少し時間がかかるとみられる。

 23年の発生台数は8月以降前年超えが続いたものの、1~6月期が前年同期比5・3%減の約139万7千台と落ち込みが大きかったのが暦年実績に響いた。足元では同年12月が前年同月比5・6%増の約22万7千台となるなど、好調なペースで推移しており、このまま進めば、24年のプラス転換に期待がかかる。

 しかし、慎重な見方を示すリサイクル事業者が少なくない。コロナ禍前の19年の発生台数に比べると、約2割減の水準にとどまるためだ。これに、厳しい仕入れ環境も重なり、明るい見通しを描きにくい事業者が目立っている。実際、JARAグループの川島準一郎理事長は「入庫台数が22年より1割ほど減ったと話す会員企業が多い」と明かす。

 ある事業者では、仕入れ環境が「24年もほぼ前年と変わらない水準で推移するのでは」とため息をついている。

 この要因としては、円安を背景とした中古車輸出の需要拡大がある。日本自動車リサイクル部品協議会の佐藤幸雄代表理事は、「(使用済み車になりやすい)価格が20万円以下の安価な中古車がアフリカなどに多く流れているのでは」とみている。JAERAの酒井康雄代表理事も「円安で外国人の買い手の購買力が高まっている」と指摘する。

 さらに、重要な仕入れルートになっているAAでも競争環境が激化している。新車不足で中古車人気が高まったこともあり、本来、使用済み車になるようなものもAAで出品が増加していた。中古車事業者だけではなく、輸出事業者などとの競り合うケースが増え、落札価格が上昇した。仮にリサイクル事業者が落札できても、損益分岐点が高まるため、経営の重荷となる場合も増えているようだ。

 AAや整備事業者などから使用済み車を仕入れるハードルが高まる中、リサイクル事業者の一部は、ユーザーから直接仕入れる取り組みに力を入れている。NGP日本自動車リサイクル事業協同組合でも、自前の使用済み車買い取りサービスを重視する姿勢を打ち出している。小林信夫理事長は「サービスの認知度を高めていきたい」と、今後も力を入れていく方針を示す。

 イワマワークス(岩間優社長、静岡県富士市)も、SNS(会員制交流サイト)を活用した情報発信に力を入れることで、個人客からの仕入れ拡大を目指している。足元では月間入庫台数の2、3割が一般からの仕入れになっているという。今後も重要な仕入れルートとして、育成していく考え。使用済み車の仕入れ環境の悪化が長期化する中、各事業者にはこうした創意工夫が求められそうだ。

(諸岡 俊彦)