年次改良で顧客満足度の向上と市場活性化を目指す(アルファード)

 トヨタ自動車は、国内向けの一部車種で擬似的な「イヤーモデル制」を導入する。レクサス車やミニバン「アルファード」など主に高価格帯の車両で年次改良を施して商品力を保つほか、1年間に供給可能な台数を受注上限とし、受注動向を商品改良に生かす取り組みも始める。下取り価格を保ち、リースや残価設定ローンなどの金融商品と組み合わせて買い替えサイクルを縮め、顧客満足度の向上と市場の活性化につなげる。

 製造年がベースのイヤーモデル制は米国などで採用されている。日本では6~8年で新型車に切り替わり、2~3年おきの一部改良や大幅改良で商品力を保つことが一般的だ。米国のような慣行は日本だと「年次改良」にあたり、すでにマツダが採り入れている。トヨタもレクサス車で採用しているが、今後は6月に全面改良したアルファードやSUV「ランドクルーザー」などでも導入していく。

 年次改良と合わせ、受注状況をきめ細かく把握する「J―SLIM(スリム)」を活用して新たな取り組みを始める。アルファードなど人気車の場合、翌年の年次改良までの生産予定台数の上限に達した場合、受注を打ち切ることにする。また、受注データから人気グレードやパワートレインの傾向を年次改良に生かしたり、車両生産でボトルネックとなっている装備を特定して供給力の最大化につなげたりする。

 一般に、価格や下取り額といった車両価値は新型車として投入した1年目をピークに次の全面改良まで下がり続ける傾向にある。トヨタは市場データに基づき、1年という短いサイクルで継続的に商品を改良することで車両価値を保ちたい考えだ。値引きが抑制される一方で残価を保ちやすくなり、顧客満足度の向上と販社の収益確保を両立できるとトヨタではみている。

 一方、この他の量販車種については現時点で年次改良を見送る方針だ。J―スリムでは、最大2年先までの生産予定枠と受注情報を紐づけすることで納期を〝見える化〟している。年次改良を見送る車種では、上限を設けずに受注状況を分析し、受注の中身に応じて生産計画を柔軟に変えていく。

 

【用語解説】イヤーモデル=製造年月がベースのイヤーモデル制は主に海外で導入されている。米国では9月が翌年式のスタート月で、8月生産の車両は9月以降、「年式落ち」となり、値引きなどを迫られる。イヤーモデルごとにメーカーのインセンティブ(販売奨励金)やローン金利も異なる。一方、日本では製造年月を問わず、ナンバープレートを取得した年が年式となる「初度登録制」となるため、制度としてのイヤーモデルは存在しない。