中国の地場系のシェアは5割を超えた

 中国市場の販売競争の激化が日本の自動車メーカーの業績の重しになっている。ホンダは日米で販売が好調に推移するが「中国での厳しい市場環境が今後も継続する見通し」(青山真二副社長)として2024年3月期の新車販売計画を下方修正した。日産自動車の中国の23年1~6月の小売台数は前年同期比24%減に終わった。トヨタ自動車も販売台数は微増だが、値引きの影響で23年4~9月期の部門利益は大幅に減った。各社とも業績自体は好調だが、世界最大の自動車市場で巻き返せるかが焦点だ。

 ホンダの中国の23年4~9月期の販売台数は61万1千台(前年同期比12%減)だった。青山副社長は「新エネルギー車(NEV)市場の拡大や価格競争激化の影響を受けた」と語った。ホンダはNEVとして「CR─V」などのプラグインハイブリッド車(PHV)を4車種、兄弟車を含めてEVを4車種販売するが、価格競争が激しく苦戦中だ。日産も「激しい価格競争とローカル自動車メーカーによる数多くの新型車の投入によって競争が激化し、厳しい状況が続いている(日産のスティーブン・マーCFO)という。

 日本の自動車メーカーが苦戦しているのは、マーCFOが言うように地場系自動車メーカーが新型NEVを相次ぎ投入しているためだ。扱い車種をEVとPHVに絞る比亜迪(BYD)などの地場系自動車メーカーが販売を伸ばしており、中国での地場系のシェアは5割を超えた。さらに「新興企業の参入で過当競争は続いている」(日産・内田誠社長CEO)ような状況だ。日産によると、直近の3カ月間、合弁と地場系で70車種もの新型車が投入されたという。煽りを食って日産は「シルフィ」のEVの生産を止めた。

 EVの値下げ競争はガソリン車やハイブリッド車(HV)にも飛び火し、各社の収益を圧迫する。トヨタの23年4~9月期の中国事業はHVが支えて販売が前年同期比0・3%増と横ばいを確保したが、営業利益では「販売面でのマイナス影響」が327億円あった。地場系自動車メーカーとの「厳しい価格競争、特に電動車の値引き」(宮崎洋一副社長)が響いた。トヨタは、通期全体のEV販売計画を4割ほど引き下げた。三菱自動車は広州汽車集団との合弁事業からの撤退を決めた。

 日本自動車メーカー以外でも、中国で深刻な販売不振に陥っている韓国のヒョンデは北京汽車集団との合弁工場の一部を売却する。高成長を続けてきたテスラさえ23年7~9月期の世界販売が前年同期比27%増と伸び率が低下し、純利益が18億5300万㌦(約2800億円)と4割も減った。テスラは国別の販売台数や業績を開示していないが、中国などでの値下げで収益力が低下したと見られる。

 中国市場の先行きが不透明な中、対策を打ち出す動きも広がる。ホンダは24年以降、EVの新型車を4車種投入する一方、生産体制の見直しを検討する。同社は中国の合弁相手とそれぞれ24年に年産能力12万台のEV専用工場を立ち上げる。ガソリン車市場の縮小が見込まれる中、既存工場が重荷になる可能性があり、生産能力の削減に向けて合弁先と交渉する意向だ。

 日産は、26年までに中国の開発センターが手がけるNEVを4車種投入する予定で、まず24年下期にDセグメントのEVを投入する。合弁企業の中国専用ブランド「ヴェヌーシア」のNEVも26年までに6車種投入して現地ブランドに対抗する。工場の稼働率を高めるため、25年から年間10万台規模で輸出車も生産する計画だ。内田社長は「(これらの)計画を迅速、確実に実行することで、厳しい環境が続く中国事業を再び成長軌道に乗せる」と語る。

 世界販売の3割以上を中国が占めるフォルクスワーゲン(VW)も、地場系EVメーカーの攻勢を受けてEVのシェアが低下。このため地場系EVメーカーである小鵬汽車に5%弱を出資し、EVを共同開発して26年に投入する。

 EVという新市場の広がりとともに、世界で最も厳しい販売競争が繰り広げられている中国。日本メーカー各社は投資を続けて巻き返すのか、見切りをつけて撤退するかの選択も迫られる。世界最大の自動車市場でサバイバルレースが本格化する。