フィルムの施工をする人は不足しているため、技術があれば独立しやすいという

 車の外観や内装を美しくするカーディテイリング。中古車の商品化やユーザーの愛車を美しくするためのさまざまなメニューがある。目的は異なっても、車をきれいに保ちたいユーザーのニーズはさらに高まっている。そうした中で、カーディテイリングの各種メニューを展開している企業は、サービスの提供と並行して次の手を打ちはじめている。

 「トータルリペア」の名称でカーディテイリングのフランチャイズチェーン(FC)を展開するアミークス(川合康宏社長、東京都新宿区)は4月、水性塗料を使用する新しい軽板金ビジネスを発表した。水性塗料の採用に踏み切ったのは、板金塗装(BP)の職人ではない人でも作業を行えるようにするため。また、地球環境への対応もある。同社の木村智マーケティング本部長は「体に優しい環境で仕事をしたいというニーズがある」と、作業者にも配慮している。

 立ち上げ直後は既存のFC店に声を掛けてきたが、今後は新たな軽板金ビジネスを切り口にFC加盟店の拡大を目指す。まず、需要と認知度が高い軽板金ビジネスを軌道に乗せ、既存のホイールやインテリアのリペアへと事業を広げていくことを想定する。これにより、安定した事業基盤の構築につなげる。また、ガソリンスタンド(給油所)や整備事業者が加入しやすくなるよう、直営で事業を行って成功事例の収集にも乗り出す。

 ソフト99オートサービス(甲斐康之社長、大阪市中央区)は、車体を傷などから守るプロテクションフィルムをはじめ、さまざまなメニューを手掛ける。運営している車体整備工場で作業を行うほか、カーディテイリングの資機材をオンラインで販売する。

 カーディテイリングビジネスに参入した当初から行うプロテクションフィルムの施工は、スーパーカーや高級車に乗るユーザーのニーズが高く、同社もそうしたユーザー層を意識している。その一方で、今後は裾野の拡大にも努める。カーディテイリングの間口を広げることが、オンラインショップでの販売増につながるからだ。また、一定の技術力を条件にした認定施工店は、同社の講習を受ける必要もなく技術面以外のハードルは低い。今後は認定施工店をブランド化し、ステータスを高めるための取り組みも検討する。

 ダイワオートモビルズ(湯本謙治社長、東京都調布市)は、カーディテイリングのほかBP、カスタマイズなどの事業を手掛ける。独自に開発した「ナノメタルコーティング」は、同社を含むダイワグループが展開するホンダ、BMW/MINI(ミニ)、ジープなどの正規ディーラーの店舗で行う。製品の開発から販売、施工をグループ内で完結させ、他のボディーコーティングとの差別化を図っている。

 整備士不足と同様、カーディテイリングにおいても、成り手の不足は課題の一つになっている。同社はグループ内でコーティング技術を競いあう大会を開催し、優勝した大貫泰誠さんを「匠」に認定した。大会の決勝を同グループの社内イベントで行い、コーティングを行うスタッフにもスポットライトが当たるようにした。

 大貫さんはテクニカルスーパーバイザーとして他のスタッフのフォローや予定の調整などに携わる。匠をグループ内で唯一無二の存在と位置付け、同時に2人以上を在籍させないという。

 ソフト99オートサービスの小宅一相談役は「(フィルムを)貼る人が足りない」という。しかし、技術があれば特定の施工店に所属していなくても仕事の声は掛かるため「若い人は独立しやすい」(小宅相談役)と話す。アミークスでは、独立開業を目指す人は自動車関連の企業を経験していない人が多いため、カーディテイリングの仕事に需要があることに気が付いてもらうことに留意する。具体的には、開業前に実際の現場を見る工程を採り入れるなどしている。

 ◆月刊「整備戦略」2023年11月号で特集「〝美しい車〟を増やすための一手―カーディテイリングの今とこれから」を掲載します。