日清紡ホールディングス(HD)は、子会社で欧州ブレーキ摩擦材大手のTMDフリクショングループ(TMD、ルクセンブルク)を独ファンドのAEQUITA(エクイタ)に譲渡すると発表した。収益改善に取り組んだものの、足元では純損失が続いていた。このためTMDを譲渡し、無線・通信、マイクロデバイス事業と子会社の日清紡ブレーキが手がける銅フリー摩擦材事業に経営資源を集中する考えだ。2023年12月期連結業績に約380億円の特別損失を計上する見込み。
日清紡HDは2011年にTMDを子会社化し、自動車用摩擦材の世界シェアで15%を握る首位に立った。その後、早期のシナジー創出を目指してきたが、欧州連合(EU)の環境規制「ユーロ7」への対応や、CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)の普及による事業環境の変化を踏まえ、TMDの収益改善や競争力強化にはさらに時間や構造改革が必要とみて譲渡を決めた。
譲渡は11月30日の予定で、日清紡HDが保有するTMDの全株式(310万200株)と貸付債権をエクイタに渡す。「TMDを譲渡しても欧州などへのブレーキ摩擦材の供給体制に影響はない」(同社)という。また、TMDが保有する欧州やメキシコ、ブラジルの生産子会社もエクイタへ譲渡するため、日清紡HDのブレーキ摩擦材の生産拠点は日本、中国などアジア地域と米国のみとなる。
TMDは、乗用車や商用車用のディスクブレーキパッドやドラムブレーキライニング、競技用などの摩擦材を生産している。22年12月期連結業績は売上高7億5100万ユーロ(約1191億円)、営業損失4200万ユーロ(約66億円)、純損失は5100万ユーロ(約80億円)だった。