「自動車特定整備制度」は2020年4月に始まりました。先進運転支援システム(ADAS)に用いられるカメラやミリ波レーダーは、正しく機能しているか確認しにくく、万が一、故障していれば重大な事故につながりかねません。このため、エンジンやブレーキなどを取り外す「分解整備」から、取り外さなくても装置の作動に影響がある電子制御装置を含め、特定整備として資格要件を新たに設けることにしたのです。
こうした特定整備を行うには、点検作業場やスキャンツール(外部故障診断機)の保有、整備士などの要件を満たして国から認証を取得する必要があります。制度開始から24年3月までの4年間は適用が猶予されていることもあり、22年度末までに認証を取得した事業場数は4万4166件と、全事業所数の5割にとどまっています。
経過措置に加えて、対象車両がまだ少ないため「設備投資と入庫台数が見合わない」と様子見の事業者も少なくありません。ただ、代表的な作業であるセンサー類のエーミング(機能調整)は、準備を含め、1台あたり30分から1時間はかかると言われています。作業の習熟には時間がかかるため「台数が増えてから認証取得を始めても遅い」との声もあり、早期に認証を取得し、作業実績を積むことが求められます。ただ、新たな投資ができない事業者の中にはこうした特定整備が当たり前になったタイミングで、廃業を検討しているところもあります。
また、認証取得が必要な事業者は、これまでの分解整備事業者から車体整備や電装品整備、自動車ガラス修理業などにも広がっています。フロントガラスやバンパーの交換、カーエアコンの修理などでも、センサー類を取り外す必要があることから、幅広い整備関連事業者が特定整備の対応を進めています。
業界は対応に追われていますが、衝突被害軽減ブレーキなどが広まる中、クルマ社会の安全・安心を保つには欠かせない制度と言えます。