新型「eキャンター」
急速充電口(左)と普通充電口
10インチのフル液晶メーターを採用した
ダンプボディーはePTOから動力を取り出している
今回から新たに外部給電システムを取り入れた
多様な架装に対応している

 三菱ふそうトラック・バスは、小型電気トラック(EVトラック)「eキャンター」をフルモデルチェンジして国内市場に投入した。シャシーラインアップを28型式に拡大するとともに、搭載するバッテリーも想定する航続距離に合わせて選択できるようにし、さまざまな用途に柔軟に対応する。駆動用モーターとインバーター、減速機を一体化した「eアクスル」を採用し、パワートレインの省スペース化も図った。ライバルの日野自動車といすゞ自動車も小型EVトラックを国内市場に投入しており、商用車分野でEV市場が活性化する。

 eキャンターは、三菱ふそうが2017年に国内初となる量産EVトラックとして他社に先駆け販売した。これまではリース販売だったこともあって、販売は伸びなかった。カーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量実質ゼロ)に向けた取り組みが求められる中、物流事業者などで走行中の二酸化炭素(CO2)排出量がゼロのEVトラックを求める声が高まっており、これらの需要に対応するモデルとして新型車を開発した。

 先代モデルのシャシーは1型式だったが、新型車はさまざまなビジネスシーンに対応できるように28型式に増やした。同時に、ダンプやキャリアカー、ごみ収集車、リアクレーンといった荷台などを駆動するための動力を取り出す装置「ePTO」を新たに採用した。先代は「カーゴ系」のみの展開だったが「特装系」の架装にも対応し、用途を先代より4種類増やして9種類とした。

 また、モジュール式バッテリーを採用し、バッテリーを1個搭載するSサイズ(41㌔㍗時)、2個搭載のMサイズ(83㌔㍗時)、3個搭載のLサイズ(124㌔㍗時)の中から事業者が選択できる。バッテリーの搭載数によって航続距離が異なる。ラストワンマイル輸送から長距離の輸送まで対応する。

 新型車は、顧客の多様なニーズに対応する一環として、eアクスルを採用した。先代モデルに搭載していたモーターの駆動力を伝えるためのプロペラシャフトを廃したことで、シャシーレイアウトの自由度が高まった。

 回生ブレーキの強度を選択できるように「回生なし」から「強回生」まで4段階に選択できる。強回生ではフットブレーキの操作をほとんど必要としないため、運転負担を軽減できる。車載バッテリーからオプションの「パワーステーション」を通じて外部給電するシステムも新たに搭載する。災害などで停電した際には、社会インフラの電源として活用できる。

 新型車では安全装備の充実も図った。ドライバーから死角となる車両の左側方をミリ波レーダーでセンシングし、危険を検知すると警告を発し、衝突被害軽減ブレーキが作動する左折巻き込み防止機能「アクティブ・サイド・ガード・アシスト1・0」を標準装備する。坂道発進を支援する「電動パーキングブレーキ」や、バックカメラで後退時の事故リスクを軽減する「バックアイカメラシステム」も新たに標準装備する。

 三菱ふそうは、39年までに国内に投入するすべてのトラックとバスについて走行中にCO2を排出しない「ゼロエミッション車」にする目標を掲げている。新型eキャンターの投入で電動化を加速し、顧客である事業者が推進するカーボンニュートラルを支援していく。

 新型車の参考小売価格は標準キャブ(代表的な仕様)が1370万500円(消費税込み)。