ペロブスカイト太陽電池は柔軟性に富み、発電効率も高まりつつある
将来は太陽光パネルの搭載が当たり前になるかも…(トヨタのプリウスPHV)

 次世代太陽電池である「ペロブスカイト太陽電池」の開発が進んでいる。低コストで高効率な発電が可能なことから、工場の脱炭素化や車載向けなど幅広い用途が見込める。中でも20年前から次世代太陽電池の開発に取り組んできたアイシンは、2025年度に自社工場の屋根と壁面で発電実証試験を行う計画を掲げ、パイロットラインを新設するなど意欲的だ。豊田合成や日本ガイシなどもスタートアップに出資し、事業化に期待をかける。

 ペロブスカイト太陽電池は「ペロブスカイト(灰チタン石)」と同じ結晶構造を持つ有機無機混合材料を用いた日本生まれの太陽電池だ。極めて薄いため柔軟性が高く、曲面などにも搭載しやすいうえ、蛍光灯などでも発電できる。量産にも向き、主原料のヨウ素などを国産で賄える利点もある。変換効率も年々向上し、「パネルの積層化などで30%以上も狙える」(アイシン)と、従来型のシリコン系太陽電池をしのぐ潜在能力を持つ。富士経済(菊地弘幸社長、東京都中央区)は、新型・次世代太陽電池の世界市場が35年に21年比22・6倍の8300億円になると予想し、このうちペロブスカイト太陽電池市場を7千億円規模と見込む。

 20年前から豊田中央研究所らと次世代太陽電池の開発に取り組んでいたアイシンのほか、京都大学発スタートアップでこの分野を手がけるエネコートテクノロジーズ(加藤尚哉代表取締役、京都府久御山町)には、日本ガイシや豊田合成などが出資する。エネコートテクノロジーズは、薄暗い場所でも発電でき、設置場所を選ばないという利点から「どこでも電源」としてさまざまなアプリケーションを開拓する計画だ。同社に出資する日本ガイシは、排ガス浄化用触媒担体が主力のポートフォリオの転換を目指し、研究開発費の8割をカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)やデジタル関連に振り向けている。小林茂社長も「ペロブスカイト太陽電池には可能性がある」と期待をかける。

 実用化には課題もある。アイシンは、自動車のルーフパネルでの発電や工場の脱炭素化などの需要を見込むが、車載用では耐熱性確保のほか、欧州連合(EU)のELV指令を満たすため原料の非鉛化に取り組む必要があると指摘する。有機系太陽電池技術研究組合(RATO)の幹事会社も務めるアイシンは、研究機関や他企業との連携も強化してこうした課題を克服したい考えだ。

 電気自動車(EV)に出力1㌔㍗の太陽光パネルを載せると、1日あたり50㌔㍍を週4日間走る場合は充電が要らない。また、太陽光パネルがすべての電動車に普及した場合、二酸化炭素(CO2)排出が年間約591万㌧減る―こんな試算を過去に新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)がまとめている。運輸部門の脱炭素化を目指すうえでも、次世代太陽電池はダークホースと言えそうだ。

(堀 友香)