【米ラスベガス=水町友洋】ソニーグループとホンダの共同出資会社であるソニー・ホンダモビリティ(SHM、川西泉社長)は5日、米ラスベガスで開催中のエレクトロニクス見本市「CES2023」で、新ブランド「アフィーラ」を発表し、プロトタイプを世界初公開した。エレクトロニクス企業と自動車メーカーによる新たなモビリティとして3年後の量産を目指す。
SHMの水野泰秀会長兼CEO(最高経営責任者)は、同日の報道関係者向けイベントで「車のデザインの構成要素が動力性能やパフォーマンスといったものから、ソフトウエア、ネットワーク、インターフェースへと変わっていく転換点で、常識にとらわれず、今までの車両デザインに求められた個性や造形のあり方を見つめ直したい」と語り、モビリティの新たな付加価値をアピールした。
新たなブランド名については「人がモビリティを知性を持つ存在として感じること、またモビリティがセンシングやAI技術を用いることで人と社会が感じること、というインタラクティブな関係性を表わしている」(水野会長兼CEO)と紹介した。
フロントグリル部に設置した「メディアバー」はその象徴だ。モビリティ自身が周囲の人に意志を伝え、コミュニケーションすることを可能にした。今後、パートナー企業とともに活用方法を探っていくという。
アフィーラには、ブランドコンセプトである「オートノミー(進化する自律性)」「オーグメンテーション(身体・時空間の拡張)」「アフィニティ(人との協調)」を実現するための最新技術が導入されている。
世界最高基準の自動運転と先進運転支援システム(ADAS)を実現するため、車内外にカメラとセンサーを45個搭載。合計800TOPS(1秒間に800兆回の演算可能)の性能を持つ高性能SoC(システム・オン・チップ)には、クアルコム製「スナップドラゴン デジタル シャシー」を採用する。同社とは複数の長期的なパートナーシップを構築する予定だという。
また、「フォートナイト」などのオンラインゲームを手がけるエピックゲームスとも協業し、モビリティにおける新しいエンターテインメントを創造する。
アフィーラで提供する安全機能や新サービスなどは、5G(第5世代移動通信システム)を活用して継続的にソフトウエアを更新し、機能を高めていく。
ソニーグループとホンダは22年3月に提携を発表。以降、ソニーが強みを持つイメージセンシング技術や通信技術、エンターテインメント分野でのノウハウ、ホンダの車両開発や安全技術などを組み合わせ、高付加価値EVの共同開発を進めてきた。
車両自体はSHMが開発を担うが、ホンダのサプライチェーン(供給網)も活用する。生産もホンダの北米工場で行う。26年前半に北米で、同年後半には日本でも納車を始める予定だ。