工業高校と整備専門学校の連携は深刻な整備士不足の対策としても期待される
協定締結式で連携を誓う多摩工業高校の前田校長と小山学園の山本理事長(右)

整備系の専門学校と教育面で連携する工業高校が相次いでいる。技術の急速な進化に工業高校が単独で対応することのハードルが高まっているためだ。自動車に関する技術の複雑化、高度化は今後ますます進む中、各校は工夫を凝らして対応している。

「自動車を専門に教えられる教員がいないため、生徒たちに広く浅くしか教えられない」。東京都立多摩工業高校の前田平作校長は表情を曇らせる。機械科の生徒が技術を学ぶ上で高度な工業製品の自動車は恰好の教材となる。同校では職業能力開発機関などで指導経験のあるベテラン人材を外部指導員として招くことで指導体制の拡充に努めているが、「100年に一度」と呼ばれる自動車業界の大変革に対応するには、さらなる取り組みが必要と考えている。

同校は2022年11月、東京工科自動車大学校などを運営する小山学園(山本匡理事長)と、高専一貫の教育プログラム開発を目指して連携協定を締結した。前田校長は整備士教育に定評がある小山学園との連携を通じて自動車業界との接点を増やすことに意欲を見せる。「電気自動車(EV)を工業高校に持ってきてもらったり、自動車メーカーの人が運転支援システムなどの先端技術について生徒たちに話をしてくれたら」と期待する。

小山学園は練馬工業高校や六郷工科高校とも教育連携協定を締結している。工業高校関係者の間では専門学校の充実した学習設備に期待する声がある。高度経済成長期に導入した古い機械設備を現在も使用している高校もある。「溶接ロボットなど新しい設備を取り入れたいが、景気が悪化した時期に予算が減ったりした影響もあり、なかなか難しい」(前田校長)のが実情だ。小山学園の設備について前田校長は「素晴らしい充実ぶり。生徒は見るだけでも勉強になる」と高く評価する。

専門学校との連携を入学希望者の増加につなげたいと考える人もいる。六郷工科高校は日本工学院専門学校などを運営する片柳学園(千葉茂理事長)と教育連携協定を締結しており、六郷工科高校の生徒が近隣の日本工学院専門学校蒲田キャンパスで人工知能(AI)などの授業を受けている。福田健昌統括校長は、生徒の最新技術に対する理解の向上につながることを強調するとともに、生徒募集に好影響を与える可能性に言及する。「工業高校がこうして専門学校や大学につながっていることを具体的に示すことができ、中学生や保護者などが工業高校に魅力を感じやすくなるのでは」と語る。

普通科志向やものづくり離れなど、工業高校を取り巻く環境は厳しさを増している。学習環境のさらなる拡充や志望者の増加に向け、整備専門学校と連携するケースは今後も増えそうだ。