シェフラーの可変バルブ制御システム
HKSが提案するプレチャンバ

 グローバルで電気自動車(EV)シフトが加速する中、ガソリン・ディーゼルエンジンの技術革新を続けるサプライヤーがいる。27日まで開催された「人とくるまのテクノロジー展2022横浜」には、国内外のエンジン部品メーカーが可変バルブシステムやスチール製ピストン、急速燃焼技術などの最新技術を紹介した。ダウンサイジングエンジンやハイブリッド車(HV)用エンジンに適用、燃費改善に寄与する技術をアピールする。EVシフトが進んでも内燃機関を搭載する自動車の新車市場は30年時点で約7割を占めるとの予測もある。エンジン部品メーカー各社はEV対応やエンジンに代わる新規事業を視野に入れつつ、内燃機関向け事業での収益確保も狙う両にらみの戦略を進める。

 シェフラーは、ハイブリッド車(HV)向けの可変バルブ制御システム「ユニエア」を開発した。1本のカムシャフトで吸気バルブ、排気バルブの両方を制御できるのが特徴で、通常2本搭載しているカムシャフトの1本をユニエアに置き換える機構だ。

 装置内に電磁弁を組み込むことで、吸気バルブの早閉じ(ミラーサイクル)、遅閉じ(アトキンソンサイクル)にも対応する。サイクルとシリンダーごとにバルブリフトをち密に制御できる。ユニエアによってバルブ開閉を連続的に変えることができ、機会損失低減につながるため、気筒休止エンジンへの適用を見込む。

 エンジンのフリクションを80%低減するバランスシャフトも開発した。通常、ベアリングには滑り軸受を使うが、開発品には転がり軸受けの構造を採用した。ベアリングメーカーの知見を生かし、摩擦低減を実現した。

 マーレは、電動車向け事業を進めるとともに、エンジン向け部品も開発する「デュアルストラテジー」戦略を進めている。鍛造スチール製ディーゼルエンジン用ピストンは、日本の自動車メーカーに採用されたという。一般的なアルミ製ピストンと比べて軽量で、高強度なのが特徴。熱伝導率が低く、冷却損失低減も図れる。

 同社は、キドニー冷却空洞を設けたスチール製ピストンも展開している。低排気量の大出力エンジンを想定して設計したもので、ピストン内部に流れる冷却オイルの滞留を防ぎ、大出力エンジンでも熱による亀裂の発生を防ぐ設計となっている。

 同社がスチール製ピストンを開発するのは、世界的な排気ガス規制の強化がある。自動車メーカーは規制に対応するため、排気量や気筒数を減らす代わりに、ターボチャージャーを装備して出力を確保している。エンジン部品への負荷が増えるため、サプライヤーに耐久性の高い部品が求められ、これに対応したものだ。

 チューニングパーツなどを手掛けるエッチ・ケー・エス(HKS)は、熱効率の向上と高出力化、燃料消費量の低減に寄与する「プレチャンバ(副燃焼室)」を開発。点火プラグ先端に小さな容積で覆った構造。副燃焼室内で混合気に点火し、プレチャンバ先端に設けたオリフィスからジェット火炎を噴射させ、メインチャンバ内の混合気を急速に燃焼させる。

 現在、プレチャンバ方式が市販車に採用されているのはマセラティ「MC20」だけだ。HKSは「カーボンニュートラル対応で合成燃料などが使われるようになる中で、燃えづらいものに対してはプレチャンバが有効な解決策の1つになる」と、合成燃料を含めてエンジンが将来的に生き残ることに期待する。

 TPR、日本ピストンリングのピストンリングメーカーは、めっきや窒化処理、PVD(物理的蒸着法)、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)など、低フリクション化で燃費向上に寄与する表面処理技術の開発に注力する。カーボンニュートラル社会でエンジンが存在するには、合成燃料など次世代燃料への対応も欠かせない。TPRは「バイオ燃料などの環境対応燃料もある。内燃機関部品と新技術の両輪で今後も対応していく」と、今後も内燃機関向け研究開発投資を継続する意向を示す。

 ただ、エンジン部品メーカーでも、エンジン部品事業で培ってきた技術を、EV向け部品へ応用することで、EV向け事業を立ち上げているケースも目立つ。「今の部品が最後の世代」としてエンジン部品の研究開発を取り止めているサプライヤーもある。エンジン部品メーカーは、どの分野に重点投資していくのか、生き残りをかけた選択を迫られている。