日整連の木場専務理事は「コロナ禍でも技術の対応は待ってくれない」と現状を説明する
電子制御装置整備への対応が必須

 自動車社会を支える上で必要不可欠となった自動車整備。ただ、安心と安全な交通社会で重要な役割を担う割には不遇な状況に置かれているのが実情だ。こうした逆境の整備業界で未来に向けた取り組みを行う企業や団体、ヒトなど幅広い視点から直面する課題や課題解消に向けた考え方や取り組みを紹介する。

 ■整備業界の現在地と明日の整備

 整備業界の売上高はすでにピークを過ぎており、今後も人口減少などから成長が見込めないのが実情だ。日本自動車整備振興会連合会(日整連、竹林武一会長)が発行する「自動車整備白書」の2021年度調査によると、総整備売上高は前年度比1・9%減の5兆5510億円だった。長期的には1995年度調査の6兆5693億円をピークに減少傾向にある。特に事故整備売上高の減少が顕著で、調査開始の91年度以来初めて1兆円を割った。さらに緊急自動ブレーキなど先進運転支援システム(ADAS)の普及による事故の減少に続き、国内保有台数の減少で点検や車検などストックビジネスにも影響があると考えられる。

 需要が期待できない中で、整備業は新技術対応という明確な課題を抱えている。足元では次世代車と呼ばれる、電気自動車(EV)や自動運転車が身近になりつつあるが、日整連が昨年6月に整備事業者を対象に実施した調査「新技術への対応状況」(回答数=8249)では51・0%が「困っていることがある」と回答した。整備業は有限な需要の中で、果てし無い技術の進歩への対応が迫られている。

 整備業が危機的な状況にある中でも、日整連の木場宣行専務理事は「整備業はなくならない」と言い切る。車両の動力がエンジンからモーターに置き換わっても運転の主体がシステムに移行したとしても、車両が摩擦で動くためだ。自動運転社会ではむしろ「整備の良し悪しが命に直結し、日々のメンテナンスの重要性がますます増える」と整備業の社会的価値の向上を予測する。ただ、重要性が増す代わりに事業者が「市場のニーズに対して的確に対応する技術を持つこと」が大前提になるとみている。

 ■整備3種の〝神器〟

 こうした未来の自動車社会に対し、木場専務理事は①技術②ツール③情報─の3点への対応が欠かせないとみている。整備事業者に提供できる体制づくりの重要性と、日整連が目指していくべき必要性も強調する。新技術への対応状況の調査でも、研修機会や人材、機器設備、整備情報を確保できていないことが困りごとの上位に位置していた。整備技術の高度化と同時に、外部故障診断機(スキャンツール)などツールの高機能化や専門化が事業者の経済的な負担になっていることを裏付ける。こうした課題の解決策として、「ツールの標準化や汎用化を整備業界として目指していけるようにしたい」と話す。また、メーカーや車種で異なる整備情報も幅広い事業者にいかに提供できるかが鍵になるという。

 ■昨日の敵(ライバル)は今日の友

 とはいえ、各種情報を充実させたとしても、自動車技術が高度化し続ける中で、個社単独では対応が難しい局面が生まれることも想定される。そのセーフティーネット(安全網)として「同じ地域の事業者が連携し、整備作業を協業・協同する仕組みづくり」(木場専務理事)が急務となる。例えば、地域連携の中で新技術が必要な整備を自動車メーカーごとに分担することなどを想定している。「隣の整備工場はライバルという意識がまだまだ強いが、これからの時代はすべてのメーカーに1社で対応するのは難しい」とみる。手を取り合わなければ、最終的にはエンドユーザーの信頼損失につながる懸念も増す。日整連では「事業者同士の仲人役を都道府県振興会・商工組合が担当し、日整連は好事例と行政などの支援措置を各振興会と共有して円滑な運営をサポートする」ことで新たな枠組みを推進していきたい考えだ。

 また、木場専務理事は地域連携が「人手不足の緩和にもつながる」と言及する。地域連携で作業に特化した入庫車両が増えれば、自ずと業務効率化が期待できるようになる。業務の工数削減にはタイヤチェンジャーや洗車機などによる作業の自動化や「保有関係手続きのワンストップサービス(OSS)」による業務のデジタル化があげられるが、地域連携も一つの選択肢になる。整備業界の人手不足は深刻になる一方だが、人を増やすのではなく、4人必要な業務を3人に減らすなど視点を変えることで現状を改善できる可能性を整備業界に示していけるとみている。 

 整備業は今まさに向かい風の中を懸命に走り続けている。ただ、鳥や航空機が向かい風に向かって飛び立つことを最適とするのと同様に、アゲインストの風が吹いている状況だからこそ新たに生み出せるものがあると言えそうだ。

(村上 貴規)