水素特区などに重点的に水素STを整備する(都内の水素ST)

 日本水素ステーションネットワーク(JHyM、菅原英喜社長、東京都千代田区)は、水素ステーション(ST)の整備方針を改める。従来は全国を平均的に網羅するようにSTを配置してきたが、今後はメーカーや自治体が燃料電池車(FCV)を用いた実証実験を展開する「水素特区」などに投資先を絞る。FCVの普及はまだ限定的な状況で、地域ごとの水素需要に差がみられる。さらに、これまでの設備開設によって、国内では水素充填の空白地域解消が一段落した。こうしたことから、水素の需要伸長が見込まれる地域にST新設を集中する方針に切り替える。採算確保など費用対効果が期待できる施策を立て、STの自立化を支援する。

 JHyMは、2018~22年度の「第1期」に全国で80基の水素STを整備することを目標に掲げており、概ね達成を見込む。第1期は東京都や愛知県など4大都市圏を中心に全国でSTを立ち上げ、空白地域をほぼカバーできたという。

 これを受けて、23~27年度の「第2期」では、従来方針を転換し、地域を限定してSTを整備することにした。STの新設数は過度に追わないという。22年度から新たな方針のもとで整備を進める。

 水素エネルギーやFCVの活用が盛んな水素特区など、今後、需要が生まれやすい地域に集中的にSTを配置する。また、すでに自動車メーカーが商用FCVなどの走行実証を開始しており、こうした早期の社会実装が見込まれる領域も視野に入れ整備を加速する。

 インフラ関連企業や自動車メーカーにSTの開設候補地を選定してもらい、JHyMが自立性を精査することにして、費用対効果を加味した整備計画をつくり上げる。

 政府は2030年にFCV80万台、水素ST1千基の整備を目標に掲げる。しかし、足元では、FCVの国内保有台数は約6千台、全国の水素ST数は約160カ所にとどまる。菅原社長は「第2期は踊り場になる。需要が大きく伸びる時を見据え、効率的に水素STを配備していく」とした。