東レは31日、樹脂製品の一部で米国の第三者安全科学機関であるULの認証試験で不適切行為があったと発表した。難燃性に関するUL94規格で、認証試験で指定されたグレードと異なる試験用サンプルを提出していた。約10年間にわたって実施されていたとみている。同社は2017年にもタイヤの補強材などの検査データ改ざんを行っていた。その際、全社で不正行為がないか調査したものの、今回の事案は発見されていなかった。

 不適切行為があったのは、ABS樹脂「トヨラック」、ナイロン樹脂「アミラン」、PBT樹脂「トレコン」、PPS樹脂「トレリナ」、LCP樹脂「シベラス」、PLA樹脂「エコディア」の6製品110品種。

 対象製品は、20年度の販売量実績で4万9千㌧を生産していた。同社は年4回の品質保証コンプライアンスアンケートを実施しており、昨年11月に行ったアンケートで不適切行為が明らかとなった。ULの抜き打ち試験で、供給している製品を提出せず、同試験用のサンプルを渡していた。同社によると、すでに販売している対象製品の9割程度は難燃性に問題がないとしている。

 トレリナは自動車内外装用に採用されている。これら樹脂製品は家電などにも幅広い業界に使われており、不適切行為の対象製品は国内外で1950社に提供しているもよう。そのうち1870社への供給分は難燃性試験に問題がないとする一方で、残り約80社は難燃性試験をクリアしていないとしている。

 同社の樹脂製品を用いた最終製品での事故などは現時点で発生していない。31日には有識者調査委員会を設置。原因究明に取り組むほか、同社グループ全体のUL認証の調査を行う。今後の供給は、顧客との協議で判断していく。